西表島の気候

 ケッペンの気候区分では、西表島は温帯湿潤気候区(Cfa)に属します。しかし、温帯気候(C)と熱帯気候(A)の区別の基準は再寒月の平均気温が18℃を下回るかそれ以上かであり、西表の場合再寒月の1月の平均気温は17.6℃ですから、西表は“熱帯気候”であると言ってしまっても全く過言ではないでしょう。西表の年間の平均気温は23.3℃で、22.8℃の香港よりも暖かいということになります。
 このように内地と比べて冬は特に暖かいのですが、一方真夏の気温は内地とほとんど変わりません。真夏の1日の最高気温は、内地では35℃を超えることも珍しくありませんが、西表ではせいぜい32〜33℃までで、最高気温ではむしろ内地よりも低めなのです。しかし気温と暑さは別物で、真夏の西表の暑さはそれはハンパではありません。日差しの強さと紫外線量はきっと内地の何倍もあるのでしょう。
 ですから、西表で夏に外を出歩いたり海で泳ぐときには十分な紫外線対策が必要で、日焼け止めや日焼けローションなどが必需品となります。西表に行ってこんがりと日焼けしてやろうと考える人も少なくありませんが、いきなり肌を露出して焼くのははっきり言って自殺行為です。そういうことをやって皮膚が水ぶくれになり、発熱と脱水症状を起こして寝込んだ人を何人も知っています。西表できれいに日焼けしようと思えば、内地の日焼けサロンなどであらかじめ肌に下地を作っていくか、日焼け止めで強力にガードしながらじわじわ焼いていくことでしょう。なお、夏に海でシュノーケリングをするときには日焼け防止のためにTシャツなどを着て泳ぐことをおすすめします。
 服装は、4月〜11月は1日の最低気温が20℃を超えているのでTシャツに短パンで過ごせます。それ以外の時期もトレーナーと長ズボンくらいで十分で、厚手のセーターやコートを着ることはありません。冬場も、晴れれば日差しはけっこうきつくて暑く感じます。
 西表島は黒潮の流れの真ん中に位置するために海水温も高く、20℃を下回ることはありません。年間の平均海水温は25.3℃で、このように温暖な海洋環境が色とりどりの珊瑚を育み、豊富な熱帯性魚介類の楽園となっています。ちなみに、内地の海開きの時の海水温が22〜23℃ですから、西表では一年中泳げるということになりますが、ただ冬場(12〜2月)は季節風が強くて水からあがってからが寒いので、実質的に海水浴には向かないでしょう。ダイビングはもちろん一年中できますが、特に寒がりの方は冬場にはドライスーツを使用した方が無難かも知れません。でも、西表と伊豆の海水温を比較してみると西表がいかに暖かいかわかります。ただ、島のダイビングサービスの多くは正月過ぎから2月いっぱいまでは客が少ないために営業を休んでいます。
 西表島は年間を通じて降水量が多く、年間の総雨量は東京の1.6倍にもなります。そのために水は非常に豊富で、絶対に水不足にはなりません。山がちな地形なので雨雲が発生しやすく、いつも島の上空のどこかにスコール雲がかかって雨が降っています。ぴーかんに晴れていたと思っても一転にわかにかき曇り、滝のようなスコールがやってくることも日常茶飯事で、まさに熱帯性の気候と言えるでしょう。
 梅雨の時期は毎年5月中旬〜6月中旬で、内地よりも約1ヶ月早く、梅雨前線が次第に北上して内地が梅雨入りするのと入れ替わりに梅雨が明けます。西表の梅雨時期は湿度が85〜100%で、まるで蒸し風呂の中にいるようですが、沖縄本島地方に比べると降水量は比較的多くないようです。
 梅雨が明けると本格的な夏が到来します。梅雨明け直後の西表は快晴で風もない安定した日が続き、最も西表らしさを感じることができる季節です。
 7月中旬を過ぎると沖縄名物の台風シーズンに入ります。西表には年間だいたい3〜5個くらいの台風が襲来、あるいは影響します。フィリピンの北から八重山近海にかけてはこの時期によく台風が発生します。このあたりの台風の特徴は、概して動きが遅いのと、移動しながらどんどん発達することで、例えば西表島が4〜5日間くらい強風圏の中にあることも珍しくありません。台風の勢力もそれは凄まじく、家が全壊したり、コンクリートの電柱が根元から折れたりすることすらあります。内地の方では台風の時によく死傷者が出ますが、沖縄ではそのようなことはまずありません。それは、台風の時には絶対に外を出歩かないからで、それくらい台風の怖さをわかっているということです。
 夏の観光シーズンに西表へ出かけて、運悪く台風に遭ってしまってずっと宿に缶詰だったなんてこともありますが、そのときは“こんどまた来よう”と思って潔く諦めることです。沖縄ではたとえ台風で住む家がなくなってしまっても、“仕方がない”と思うしかないのですから。カンピラ荘では、台風のときはみんなでトランプなどのゲームをやったり、夜はひたすら飲んでいます。でも、いっしょに缶詰になった人たちと仲良くなれたりして、それもまた楽しいものです。


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