貝の採集と標本作成法のページでも説明したように、実は生きたサンゴの群生帯には貝類はほとんどいません。サンゴ自体が動物で、他種のサンゴと厳しい生存競争をしながら生きているのでそのようなところには貝は棲めないのです。ただし、サンゴの仲間の腔腸こうちょう動物(ソフトコーラル)を餌にしているウミウサギ類やポリプのないテーブルサンゴの裏面に棲んでいる微小貝などは別です。
サンゴのガレ場に生息するサラサバテイ
ウミトサカに付着してポリプを食べるウミウサギ
足糸で強く岩に張り付き生息するシラナミ
 貝が生息しているのは、死んだサンゴの岩礁帯やサンゴが固着している岩礁の間隙などです。特に死んだサンゴの岩礁帯の岩面には小型の付着藻類がよく繁茂し、それを餌にしている藻食性のサザエ類、ニシキウズ類、タカラガイ類などが生息します。また、リーフ際の平らな岩盤上のくぼみや礁池内の暗礁(隠れ根)にもいろいろな貝がいます。このページではそのような珊瑚礁の周辺に生息する貝類について種ごとに概説します。なお、解説の凡例はこちらです。

ミミガイ(背面)
ミミガイ(腹面)
マアナゴ(背面)
マアナゴ(腹面)
イボアナゴ(背面)
イボアナゴ(腹面)
ヒラアナゴ(背面)
ヒラアナゴ(腹面)
コビトアワビ(背面)
コビトアワビ(腹面)
ミミガイ
耳貝
ミミガイ科
Haliotis asinina
ハリオティス アシニナ
 殻長10cm程度の細長い楕円形の貝で、人の耳のような形をしているのでこの名がある。殻頂は小さく、殻の左端に位置する。殻の割に軟体部が著しく大きく、殻に収まりきらない。本科の他種とは異なり、外套膜で常に殻を覆っているので殻には付着物がつかず光沢があって美しい。主に夜行性で、昼間は岩礁帯の岩の裏などに潜んでいて、夜に岩の表面に出てきて活動する。
マアナゴ
真穴子
ミミガイ科
Haliotis ovina
ハリオティス オウィナ
 殻長5cm程度で殻は円形に近い。他のアワビ類に比べて殻頂がかなり中央に寄るのでアワビが巻貝であるということがよくわかる。殻表は凹凸が激しく、茶褐色と緑褐色の地色に白色帯が不規則に走る。殻表は通常付着物に覆われているが、磨き上げると光沢が出て美しい。西表では岩礁帯に普通にみられ、死殻はよく砂浜に打ち上げられている。食用になり、身は柔らかくて美味。
イボアナゴ
疣穴子
ミミガイ科
Haliotis varia
ハリオティス ワリア
 殻長6〜7cm程度の中型のアワビ類。殻は楕円形でよく膨れ、かなり厚質。殻内面の真珠層はよく発達する。殻表に疣(いぼ)状の突起があるのが和名の由来。リーフ際の岩礁帯などに生息するが、西表ではあまり個体数は多くない。この類の貝はいつも決まった岩の窪みを住処にしているので“穴子”と呼ばれる。多くは獲れないが食用になり、美味である。
ヒラアナゴ
平穴子
ミミガイ科
Haliotis planata
ハリオティス プラナタ
 殻長3〜4m。殻は楕円形でかなり扁平、やや薄質である。呼水口は突出して管状になる。殻表には細い螺肋が認められ、顕著な凹凸がある。殻背面の色彩は赤褐色と白色のまだら模様で、殻内面の真珠光沢は強い。岩礁帯に生息するが個体数は少ない。食用になり、柔らかくて美味。
コビトアワビ
小人鮑
ミミガイ科
Haliotis jacnensis
ハリオティス ヤクネンシス
 成体でも殻長1cm程度の超小型のアワビ類。殻表には螺肋がよく発達し、殻の内面にも明瞭に現れるのが特徴。殻頂はやや中央に寄り、殻表の肋上には鱗片状突起がある。殻頂はやや中央に寄る。呼水口は殻の割に大きく、強く突出する。岩礁帯に生息するが個体数は少ない。
チリメンアナゴ
ベニシリダカ
ギンタカハマ
コシダカギンタカハマ
ギンタカハマ×コシダカギンタカハマ雑種
チリメンアナゴ
縮緬穴子
ミミガイ科
Haliotis crebrisculpta
ハリオティス  クレブリスクルプタ
 成体でも殻長2cm程度の小型種。殻は楕円形で周縁は滑らか。殻頂はかなり中央に寄る。殻表には凹凸が少なくて細かい皺(しわ)が多い。殻背面には赤褐色と緑褐色のまだら模様がある。岩礁帯に生息するが個体数は少ない。
ベニシリダカ
紅尻高
ニシキウズ科
Tectus conus
テクトゥス コヌス
 殻高5cm程度で殻は円錐形。殻頂はかなり尖る。殻表は粗雑で凹凸が多い。殻の側面にはやや不規則な紅白の縞模様、殻底には紅白のまだら模様がある。サラサバテイに似るが、小型で殻頂角はより鋭く、底面は膨れない。岩礁帯のやや深所に生息する。西表ではニシキウズ科の他種に比べて個体数はやや少ない。
ギンタカハマ
銀高浜
ニシキウズ科
Tectus pyramis
テクトゥス ピュラミス
 殻高8〜10cm。別名をヒロセガイという。殻は円錐形で上層の縫合部には小さな結節がある。殻表は淡褐色で殻底は白色。殻口内は真珠光沢が強い。蓋は革質で巻き数の少ない多旋型。西表ではリーフ際などの岩礁帯に普通にみられるが、サラサバテイより個体数は少ない。身は固いが食用になる。
コシダカギンタカハマ
腰高銀高浜
ニシキウズ科
Tectus triserialis
テクトゥス  トリセリアリス
 殻高5〜6cm。殻は縦長の円錐形で殻頂はかなり尖る。螺層の巻き数は多く、縫合部はやや膨れる。殻表には細かいいぼ状突起を巡らす。殻底の角はまるい。色彩は、殻表がオリーブ色で縫合部と殻底は白色。岩礁帯のやや深所に生息し、西表ではかなり普通にみられる。
ギンタカハマ×コシダカギンタカハマ 雑種
Tectus pyramis×Tectus triserialis
 まるまビーチのリーフで採集した1個体。形態的に検討した結果、ギンタカハマとコシダカギンタカハマの雑種と推定された。
ニシキウズ
ムラサキウズ
サラサバテイ(成貝) サラサバテイ幼貝
サラサバテイ幼貝(上面から)
ニシキウズ
錦渦
ニシキウズ科
Trochus maculatus
トゥロクス マクラトゥス
 殻高5〜6cm。殻はつりがね型で殻頂は突出する。殻表には螺肋に沿って規則的な顆粒状の彫刻がある。殻色は淡紫色の地色に暗紫色の細かい斑紋がある。殻頂は紫彩される。蓋は革質の多旋型で、巻き数は非常に多い。死滅珊瑚礁域や礁池内の隠れ根などで普通にみられる。
ムラサキウズ
紫渦
ニシキウズ科
Trochus stellatus
トゥロクス ステルラトゥス
 殻の概形はニシキウズとほぼ同じだが、殻表の彫刻がやや粗い。ニシキウズよりやや大型になる。殻色は、淡緑色の地色に暗紫色の斑紋があるが、色彩変異も多い。死滅珊瑚礁域や礁池内の隠れ根などで普通にみられる。
サラサバテイ
更紗馬蹄
ニシキウズ科
Trochus niloticus
トゥロクス ニロティクス
 大型で、殻高15cmに達する。沖縄ではタカセガイという名前でよく知られている。殻は円錐形で縫合部は膨れる。幼貝では殻底の周囲には規則的な結節があって歯車状になる(右の写真)。成貝では殻は重厚になり、厚い殻皮を被る(写真はこのようにして殻皮を除去したもの)。殻表には白地に赤褐色の規則的な縞模様がある。殻口内は真珠光沢が強い。西表ではリーフ際などの岩礁帯でごく普通にみられる。殻は貝ボタンの材料として利用される。身は少々固いが食用になる。
フルヤガイ
古屋貝
ニシキウズ科
Stomatia phymotis
ストマティア ピュモティス
 殻長2〜2.5cm。殻は長楕円形でアワビ型。殻表は粗雑。殻には多くの細い螺肋が走り、体層の中央部には2本の太い螺肋が走る。螺塔は低く、強くねじれる。殻口は広くて楕円形で、殻口内には真珠光沢がある。殻色は赤みを帯びた灰白色。転石帯などに生息し、死殻が打ち上げられることがあるが、生貝を見ることは少ない。
リュウキュウヒメカタベ(腹面) リュウキュウヒメカタベ(上面)
リュウキュウカタベ(腹面) リュウキュウカタベ(上面)
コシダカサザエ
リュウキュウヒメカタペ
琉球姫片部
サザエ科
Liotina peronii
リオティナ ペロニイ
 ヒメカタベガイ類は従来ヒメカタベガイ科として独立していたが、最近の巻貝類分類体の大変更によりサザエ科内のヒメカタベガイ亜科の位置づけとなった。サザエ類とは異なって蓋は革質の多旋型。
 殻高1cm、殻径0.7cm程度の小型種。殻は平巻き型で螺塔は低い。殻表はやや粗雑。殻には太い縦肋と太い螺肋が広い間隔であり、格子状の彫刻を形成する。殻口はほぼ真円形。成貝では殻口外唇は肥厚する。臍孔(さいこう)が大きく開き、殻頂まで貫通する。殻色はほぼ一様に白色。転石帯などに生息し、死殻が打ち上げられることがあるが、生貝を見ることは少ない。
リュウキュウカタペ
琉球片部
サザエ科
Angaria delphinus
アンガリア デルピヌス
 カタベガイ類は従来カタベガイ科として独立していたが、最近の巻貝類分類体の大変更によりサザエ科内のカタベガイ亜科の位置づけとなった。サザエ類とは異なって蓋は革質の多旋型。
 殻高5cm、殻径7cm程度。殻は平巻き型で殻頂は平ら。肩には強大な結節が並ぶ。殻表には粗い彫刻と小突起が密集する。臍孔は大きく開く。殻口内の真珠光沢は強い。殻色は黒褐色で、肩の結節部は白い。死滅珊瑚礁域や礁池内の隠れ根などで普通にみられる。
コシダカサザエ
腰高栄螺
サザエ科
Turbo stenogyrus
トゥルボ ステノギュルス
 殻高2cm程度の小型種。殻は丸みが強く、螺塔は高い。殻表には太い螺肋と細い螺肋が交互に走る。殻表は緑褐色の地に赤褐色の不定形斑がある。殻口内の真珠光沢は弱い。蓋はほぼ円形で白色、表面は平滑である。岩礁帯に生息する。日本本土では普通種だが、西表では個体数はやや少ない。
チョウセンサザエ
タツマキサザエ
ヤコウガイ
オオウラウズ
チョウセンサザエ
朝鮮栄螺
サザエ科
Turbo argyrostomus
トゥルボ アルギュロストムス
 殻高7〜8cm程度。殻はサザエよりも重厚で、肩には棘状の小さな結節列がある。明瞭な螺肋があり、肋間の溝は深い。殻色は緑褐色の地に褐色の細かい斑紋が散らばる。西表で“サザエ”といえば本種のことを指すが、内地のサザエとは全く別種である。“チョウセン”という冠称は“珍奇な”というニュアンスで、朝鮮半島に本種が分布するわけではない。リーフエッジなどの岩の間隙に多く、食用として美味である。
タツマキサザエ
竜巻栄螺
サザエ科
Turbo reevei
トゥルボ リーベイ
 殻長6cm程度の中型種。殻表には螺肋や彫刻はなく全く平滑で光沢があるのが本科の他種と異なる大きな特徴。縫合部のくびれはやや強く、体層は大きく膨れる。殻には複雑な更紗(さらさ)模様があり非常に美しい。殻はサザエ類にしては薄質で、殻口内は真珠光沢がある。岩礁帯に生息するが個体数は少ない。
ヤコウガイ
夜光貝
サザエ科
Turbo marmoratus
トゥルボ マルモラトゥス
 殻高20cmを超える大型種。殻と蓋は重厚で重い。下方の螺層では肩に強い肋があり、ときに結節を形成する。殻口内は真珠光沢が強く、内唇は大きく反転する。殻色は暗緑色の地色に暗色斑と白色斑が規則的に並ぶ。軟体部も大きくてすこぶる美味であるが、西表で本種が採れることは希である。“夜光貝”といっても夜光るわけではなく、江戸時代に本種が屋久島から日本本土にもたらされたことから、“屋久貝”が転じたものらしい。殻は貝細工や螺鈿(らでん)細工の材料として高価で取り引きされる。
オオウラウズ
大裏渦
サザエ科
Astralium rhodostoma
アストゥラリウム ロドストマ
 殻長3cm程度の中型種。殻は円錐形で殻底には強い棘が2列に並ぶ。殻表は粗く、凹凸が激しい。殻底には細い螺肋があり、肋上には細かい鱗片状突起がある。殻色は乳白色だが、通常付着物に厚く覆われる。蓋は厚い石灰質で、楕円形で周囲は淡紫色。岩礁帯に生息するが個体数はやや少ない。
カタベガイダマシ(腹面) カタベガイダマシ(背面)
アマガイモドキ(前面) アマガイモドキ(背面)
マルシロネズミ(前面) マルシロネズミ(背面)
カタベガイダマシ
形部貝騙し
カタベガイダマシ科
Modulus tectum
モドゥルス テクトゥム
 殻高2.5cm程度。殻は丸みが強くて球形に近い。殻表は粗雑ではないが凹凸が多い。殻表には太い螺肋と細い螺肋が交互に走る。肩には畝(うね)状の縦肋がやや不規則に出る。殻口は非常に大きく広く開く。殻口内には多くの細かい筋がある。内唇の下部に1個の鋭い歯がある。臍孔(さいこう)は開く。殻色は白色で、螺肋上に細かい暗色点が不規則にある。リーフ際の岩盤上などに生息するが、西表では個体数はやや少ない。
アマガイモドキ
蜑貝擬き
アマガイモドキ科
Netitopsis radula
ネティトプシス ラドゥラ
 殻高1.5cm程度の小型種。殻は卵形で丸みが強く、やや薄質。殻表には細い規則的な螺肋とが多く走り、螺肋上には細かい顆粒が規則的に並ぶ。アマオブネ類と異なり殻口内唇に滑層は全く発達しない。殻色は白〜クリーム色の単一色。岩礁帯のやや深所に生息するが、西表では個体数は少ない。
マルシロネズミ
丸白鼠
シロネズミガイ科
Vanikoro helicoidea
ワニコロ ヘリコイデア
 殻高1.5cm程度の小型種。殻は丸みが強く、薄質で体層はよく膨れる。螺塔はやや高い。殻表はほぼ平滑だが、微弱な螺肋がある。殻色は白の単一色で殻には光沢がある。リーフ内の転石の裏などに張り付いている。個体数はやや少ない。
ヤグラシロネズミ(前面) ヤグラシロネズミ(背面)
アツキクスズメ(背面) アツキクスズメ(腹面)
フウリンチドリ(背面) フウリンチドリ(腹面)
ヤグラシロネズミ
矢倉白鼠
シロネズミガイ科
Vanikoro fenestratsa
ワニコロ フェネストゥラタ
 殻高1.5cm程度の小型種。殻はほぼ球形、平巻き型で螺塔はない。殻表には太い螺肋と細い螺肋が交互に走り、それが縦肋と交差して布目状となる。殻色は白の単一色で、殻口内には透明光沢がある。リーフ内の転石の裏などに張り付いているが、個体数は少ない。
アツキクスズメ
厚菊雀
スズメガイ科
Hipponix acuta
ヒッポニクス アクタ
 殻長1cm以下の小型種。殻の基本形は笠型だが、付着しているものの形によってしばしば変形する。殻は厚く、殻頂は後方に位置し、太い放射肋が走る。殻色は淡褐色で殻口内は白色。岩礁や、シャコガイ類など大型貝類の殻に固着している。西表ではごく普通にみられる。
チリメンフウリンチドリ
縮緬風鈴千鳥
スズメガイ科
Cheilea hipponiciformis
ケイレア ヒッポニキフォルミス
 殻長4〜5cm。殻は笠型で、いびつな円形。殻頂は高く盛り上がり、後方に傾く。殻表はやや粗雑で光沢がない。殻表には不規則な成長脈が波状の皺(しわ)を多く作る。殻の内面には光沢があり、殻内中央には大きなV字型の隔板がある。殻色はほぼ一様に白色。潮間帯下部から下に生息し、岩に張り付いている。西表では個体数はやや少ない。
ウミウサギ(腹面) ウミウサギ(背面)
ムラクモダカラ(腹面) ムラクモダカラ(背面)
ハチジョウダカラ(腹面) ハチジョウダカラ(背面)
ウミウサギ
海兎
ウミウサギ科
Ovula ovum
オウラ オウム
 殻高約10cm。殻は卵形でよく膨らむ。殻表は滑らかで陶器のような光沢がある。殻色は白の単一色で殻口内は暗赤褐色。タカラガイ類に似るが、殻底に滑層が発達せず殻口に歯がない点が大きく相違する。軟体部は真っ黒なので、生時外套膜で殻を覆っていると全く目立たない。専らソフトコーラル(ウミトサカ類)を食べる。西表では個体数は少ない。
ムラクモダカラ
叢雲宝
タカラガイ科
Chelycypraea testudinaria
ケリュキュプラエア テストゥディナリア
 殻高10cmを超える大型のタカラガイ。殻は縦長の紡錘形。殻は全く平滑で丸みが強い。殻表の背面と側面には輪郭の不明瞭な円い黒点と茶褐色の不定形斑(叢雲模様)がある。腹面は一様に淡褐色で、殻口は狭くて歯は細かい。珊瑚礁の入り組んだ場所に生息しているものとみられ、潜水で生貝を見ることは少ないが、摩耗した殻が打ち上げられることは珍しくない。
ハチジョウダカラ
八丈宝
タカラガイ科
Mauritia mauritiania
マウリティア マウリティアニア
 殻高10cm程度の大型のタカラガイ。殻は重厚で、殻の両側は強く角張り殻の横断面が三角形状になるのが特徴。殻の側面と腹面は黒く、背面には透明な円斑が多くあって幼貝時の殻の地色が透けている。殻口の歯は大きく、深く刻まれる。竹取物語に出てくる“つばくらめの子安貝”は本種のことであるらしい。南海岸の珊瑚礁域などでときおり見かける。
アミメダカラ(腹面) アミメダカラ(背面)
ヤクシマダカラ(腹面) ヤクシマダカラ(背面)
ホソヤクシマダカラ(腹面) ホソヤクシマダカラ(背面)
ハラダカラ(腹面) ハラダカラ(背面)
アミメダカラ
網目宝
タカラガイ科
Mauritia scurra indica
マウリティア スクルラ インディカ
 殻高4cm程度の中型のタカラガイ。殻は縦長のほぼ円柱状。殻は全く平滑で丸みが強い。腹面の滑層がよく発達して台座状になり、滑層の周囲に小黒色が多くあるのが本種を含むヤクシマダカラ亜属(Mauritia)の特徴。背面には茶褐色の地色に白色円斑が密にあって網目状となる。腹面は淡褐色で歯の刻み目は細かい。摩耗した殻がときおり打ち上げられる。
ヤクシマダカラ
屋久島宝
タカラガイ科
Mauritia arabica
マウリティア アラビカ
 殻高6cm程度の大型のタカラガイ。殻は卵形だが、個体によってやや角張ることもある。殻の背面には暗茶褐色の虫食い模様がある。殻の側面から腹面にかけて多くの小黒点がある。腹面は平らで、殻口の歯は茶褐色に彩られる。ハチジョウダカラと同様に、初めて日本本土にもたらされたときの産地が和名の由来になっているものと思われる。リーフ内の隠れ根などでかなり普通にみられる。
ホソヤクシマダカラ
細屋久島宝
タカラガイ科
Mauritia eglantina
マウリティア エグランティナ
 殻高5cm程度でヤクシマダカラよりやや小型。殻はヤクシマダカラより細長く薄質で、腹面の滑層の発達は貧弱である。殻口の歯もヤクシマダカラより細かい。殻表の模様の特徴はヤクシマダカラと同じだが本種の方が模様が細かい。生息環境はヤクシマダカラと同様だが個体数は少ない。
ハラダカラ
原宝
タカラガイ科
Leporicypraea mappa
レポリキュプラエア マッパ
 殻高7cm程度の大型のタカラガイ。殻は卵形で丸みが強い。殻の背面には淡褐色の地色に茶色の細い縦帯と小円斑があり、生時両側の外套膜が覆う境界が運河状の模様を形成する。殻の側面から腹面にかけて茶褐色の小点が散らばり、腹面は淡茶褐色。種小名の mappa は地図という意味で、背面の模様にちなむ。西表では個体数は少ないが、ときおり生貝が採集されることがある。
ホシダカラ(腹面) ホシダカラ(背面)
ヒメホシダカラ(腹面) ヒメホシダカラ(背面)
クチムラサキダカラ(腹面) クチムラサキダカラ(背面)
ホシキヌタ(腹面) ホシキヌタ(背面)
ホシダカラ
星宝
タカラガイ科
Cypraea tigris
キュプラエア ティグリス
 殻高10cmを超えるタカラガイ科の最大種。殻は卵形で丸みが強い。殻の背面には白色の地色に茶褐色の不定形斑と黒褐色の円斑が多数散らばる。腹面は周囲には黒褐色の円斑が散在し、他の部分は白色。西表ではかなり普通に生息し、ピナイビーチ沖の隠れ根やまるまビーチ沖のリーフなどで生貝が得られることがある。
ヒメホシダカラ
姫星宝
タカラガイ科
Lyncina lynx
リュンキナ リュンクス
 殻高3〜4cm程度の中型のタカラガイ。殻は卵形だが腹面の滑層が発達するためにややいびつな感がある。腹面の殻口外唇と内唇の滑層には稜角がある。殻の背面は白と茶褐色のまだら模様の地色に乳白色の薄い層が乗り、その上に黒褐色の円斑が散在する。腹面は白色で、殻口の歯は細かく鮮やかな橙色を呈する。リーフ際や隠れ根などで普通にみられる。
クチムラサキダカラ
口紫宝
タカラガイ科
Lyncina carneola
リュンキナ カルネオラ
 殻高3〜5cm程度の中型のタカラガイ。殻は縦長の樽形。殻の背面から側面には赤褐色と淡赤褐色の縞模様があり、腹面はクリーム色。殻口はやや広く、歯が紫色なのでこの和名がある。リーフ際や隠れ根などでかなり普通にみられる。
ホシキヌタ
星砧
タカラガイ科
Lyncina vitellus
リュンキナ ウィテルルス
 殻高4〜6cm程度の中型のタカラガイ。殻は卵形で丸みが強い。殻の背面には淡緑褐色の地色に輪郭の不明瞭な白点が散らばり、あたかもミルクを散らしたようである。殻の側面は暗緑褐色で、老成すると細い白条が出る。腹面は一様に淡茶褐色。リーフ際や隠れ根などでかなり普通にみられる。
ジャノメダカラ(腹面) ジャノメダカラ(背面)
タルダカラ(腹面) タルダカラ(背面)
ヤナギシボリダカラ(腹面) ヤナギシボリダカラ(背面)
ナツメモドキ(腹面) ナツメモドキ(背面)
ジャノメダカラ
蛇の目宝
タカラガイ科
Lyncina argus
リュンキナ アルグス
 殻高7cm程度の大型のタカラガイ。殻は縦長の紡錘形でかなり重厚。殻の背面には淡褐色の地色に茶色の輪郭の蛇の目模様があり、輪郭の太いものと細いものの二種類ある。腹面は淡褐色で、黒褐色の大きな斑紋内唇に2個、それらと対をなす小さな斑紋が内唇に2個ある。西表では個体数は少ないが、ときおり生貝がとれることがある。
タルダカラ
樽宝
タカラガイ科
Talparia talpa
タルパリア タルパ
 殻高7cm程度の大型のタカラガイ。殻は縦長の紡錘型でやや薄質。殻の背面から側面には褐色と淡褐色の薄い縞模様があり、腹面は対照的に暗茶褐色の滑層で覆われる。殻口の歯も同様の暗茶褐色で刻み目は白い。リーフ際や隠れ根などでかなり普通にみられる。
ヤナギシボリダカラ
柳絞り宝
タカラガイ科
Luria isabella
ルリア イサベルラ
 殻高3cm程度の中型のタカラガイ。殻は縦長のほぼ円柱状。殻色はほぼ一様に肌色で、暗色の点線状の縦線(ときに斜走する)を伴うことがある。殻の上端と下端部に橙色の彩りがあり、腹面は白色の薄い滑層で覆われる。殻口の歯は数が多く非常に細かい。潜水で生貝を見ることは少ないが、死殻はよく海岸に打ち上げられている。
ナツメモドキ
棗擬き
タカラガイ科
Erronea errones
エルロネア エルロネス
 殻高2.5cm程度の小型のタカラガイ。殻は縦長の紡錘形で中央部はやや膨れる。殻口はやや大きく開き、歯は粗く数が少ない。殻の背面と側面は淡緑色の地に褐色のまだら模様で、背面の中央に通常大きな暗色斑紋がある。腹面の滑層は淡黄色。本種の和名は、ナツメダカラという近縁種に似ることにちなむ。礁池内の転石を裏返すとよく本種が付着している。
ウキダカラ(腹面) ウキダカラ(背面)
スソヨツメダカラ(腹面) スソヨツメダカラ(背面)
カノコダカラ(腹面) カノコダカラ(背面)
コモンダカラ(腹面) コモンダカラ(背面)
ウキダカラ
浮き宝
タカラガイ科
Palmadusta asellus
パルマドゥスタ アセルルス
 殻高1〜2cm程度の小型のタカラガイ。殻は卵形だが背腹に扁平。殻の下部ではやや先細になる。腹面の殻口外唇と側面の境界に弱い稜角がある。背面には白地に黒の3条の太い色帯があり、概観が魚釣りに使う浮きのように見えるのでこの和名がある。腹面は白の単一色で、歯はよく発達する。西表では個体数は少なく、ときたま打ち上げ貝がみられる程度。
スソヨツメダカラ
裾四つ目宝
タカラガイ科
Bistolida stolida
ビストリダ ストリダ
 殻高2〜3cm程度の小型のタカラガイ。殻は角張り亀の甲のようである。縦長の樽型。殻の背面には淡青緑色の地に褐色の複雑な不定形斑があり、側面から腹面にかけて小褐色点が散らばる。通常殻の側面から腹面の滑層にかけて4個の斑紋があることが和名の由来。殻口の歯は発達し、歯から外唇および内唇に向かって伸びる多数の襞(ひだ)がある。死んだサンゴの間や転石の裏などでかなり普通にみられる。
カノコダカラ
鹿子宝
タカラガイ科
Cribrarula cribraria
クリブラルラ クリブラリア
 殻高2〜3cm程度の小型のタカラガイ。殻は通常細身の紡錘形だが、中央部がよく膨れる個体もある。腹面の殻口外唇と側面の境界に稜角が形成される。殻の背面には茶褐色の地に白色の円斑が並び鹿の子模様を呈する。腹面は一様に白色で、歯は細かい。殻口はやや広く開き、殻の中央ではなく右に寄る。台風のあとなどに礁池内でシュノーケリングをしていると生貝が転がっているのを見かけることがある。
コモンダカラ
小紋宝
タカラガイ科
Erosaria erosa
エロサリア エロサ
 殻高3〜4cmの中型のタカラガイ。殻は卵形で背腹に扁平、腹面の滑層がよく発達して台座状になる。殻の背面は淡褐色の地に多数の小白点と褐色の斑紋が散らばる。生時両側の外套膜が覆う境界は明瞭で、浅い溝状になる。左右側面の中央部に暗色の斑紋があることが和名の由来。腹面の滑層は乳白色で、殻口の歯は大きく、特に外唇では刻み目が深い。リーフ内の隠れ根などで普通にみられる。
ナシジダカラ(腹面) ナシジダカラ(背面)
アヤメダカラ(腹面) アヤメダカラ(背面)
カモンダカラ(腹面) カモンダカラ(背面)
ナシジダカラ
梨地宝
タカラガイ科
Erosaria labrolineata
エロサリア ラブロリネアタ
 殻高1.5cm程度の小型のタカラガイ。殻は細身の卵形。腹面は白色の滑層で覆われ、内唇の歯は弱い。殻の背面と側面には淡緑褐色の地にさまざまな大きさの白色斑が密にあり、梨の実の模様に似ることが名前の由来。背面の下縁に沿って黒色の斑紋が並ぶ。リーフ内の隠れ根などに生息するが個体数はやや少ない。
アヤメダカラ
菖蒲宝
タカラガイ科
Erosaria poraria
エロサリア ポラリア
 殻高2〜3cm程度の小型のタカラガイ。殻は卵形だがやや背腹に扁平で、殻質は重厚。腹面の殻口外唇と側面の境界に弱い稜角がある。殻の背面には紫褐色の地に暗色の縁取りのある小白点が散らばる。腹面は一様に赤紫色で美しく、殻口部は白い。リーフ内の隠れ根や転石の裏などでかなり普通にみられる。
カモンダカラ
花紋宝
タカラガイ科
Erosaria helvola
エロサリア ヘルウォラ
 殻高2cm程度の小型のタカラガイ。殻は卵形だが背腹にやや扁平で、側面は張り出す。腹面の殻口外唇と側面の境界に弱い稜角がある。腹面の滑層はかなり肥厚し、殻口の歯の刻み目は深い。殻の背面には赤褐色の地に小白点と暗色の斑点が散らばる。腹面は一様に赤褐色。リーフ内の隠れ根や転石の裏などでかなり普通にみられる。
ハナマルユキ(腹面) ハナマルユキ(背面)
シボリダカラ(腹面) シボリダカラ(背面) シボリダカラ(腹面) シボリダカラ(背面)
サメダカラ(腹面) サメダカラ(背面)
ハナマルユキ
花丸雪
タカラガイ科
Erosaria caputserpentis
エロサリア カプッセルペンティス
 殻高2〜4cm程度の小型のタカラガイ。殻の両側は大きく角張って殻の横断面が三角形状になり、ハチジョウダカラを小型にしたようである。背面の中央部はよく盛り上がり、黒褐色の地に小白点が密にある。殻の側面と腹面は黒く、殻口周辺は白い。背面の上端と下端には白斑がある。本科貝類の中では比較的浅所に生息し、岩礁海岸の潮間帯下部からリーフ際の岩盤上のくぼみなどにごく普通にみられる。
シボリダカラ
絞り宝
タカラガイ科
Staphylaea limacina
スタピュラエア リマキナ
 殻高2〜3cm程度の小型のタカラガイ。殻は細身の卵形。腹面の殻口外唇と側面の境界に稜線が形成される。腹面には殻口の歯から外唇および内唇に向かって伸びる多数の襞(ひだ)がある。殻の背面と側面には淡紫色(藤色)の地に小白点が散らばり、殻の上端と下端部に暗橙色の彩りがある。殻表は普通平滑だが、白点の部分が疣(いぼ)状に盛り上がる個体もある(右の写真の個体)。腹面は白色で、歯と襞は淡橙色。西表では個体数は少ない。
サメダカラ
鮫宝
タカラガイ科
Staphylaea staphylaea
スタピュラエア スタピュラエア
 殻高1cm足らずの小型のタカラガイ。殻は卵形。殻表は他のタカラガイ類のように平滑ではなく、微小な突起で覆われ“鮫肌”を呈するのでこの和名がある。背面の左側には生時両側の外套膜が覆う境界が明瞭な溝を形成する。腹面には、殻口の歯から外唇および内唇に向かって伸びる多数の襞(ひだ)があり、腹面全体が襞で覆われる。殻色は一様に灰褐色で、殻の上端と下端部に橙色の彩りがある。西表では個体数は少ないが、死殻がときどき打ち上げられる。
イボダカラ(腹面) イボダカラ(背面)
コゲチドリダカラ(腹面) コゲチドリダカラ(背面)
チリメンダカラ(腹面) チリメンダカラ(背面)
シラタマガイ(腹面) シラタマガイ(背面)
イボダカラ
疣宝
タカラガイ科
Staphylaea nucleus
スタピュラエア ヌクレウス
 殻高2cm程度の小型のタカラガイ。殻は紡錘形で腹面は平ら。殻の背面は疣(いぼ)状突起で覆われ、生時両側の外套膜が覆う境界が明瞭な溝を形成する。殻の下端部の外唇と内唇はやや下方に突出する。腹面の殻口外唇と側面の境界に稜角が形成される。腹面には殻口の歯から外唇および内唇に向かって伸びる多数の襞(ひだ)があり、腹面全体が襞で覆われる。殻色は、新鮮なものではクリーム色だが、打ち上げ貝では一様に白色になる。西表では個体数は少ないが、死殻がときどき打ち上げられる。
コゲチドリダカラ
焦げ千鳥宝
タカラガイ科
Pustularis bistrinotata
プストゥラリア ビストゥリノタタ
 殻高1.5cm程度の小型のタカラガイ。殻はよく膨れ球形に近い。殻の上端と下端は鳥の嘴(くちばし)状に突出する。殻口は狭く直線的で、非常に細かい多数の歯があり、歯から外唇および内唇に向かって伸びる多数の細かい襞(ひだ)がある。殻色は全体に茶褐色で、背面の中央部に薄い暗色斑と、側面には小さな暗色斑点が散らばる。腹面には4個の小褐色斑が左右対称に位置する。西表では個体数は少ない。
チリメンダカラ
縮緬宝
タカラガイ科
Ipsa childreni
イプサ チャイルドレニ
 殻高2cm程度の小型のタカラガイ。殻は紡錘形で中央部がよく膨れ、“提灯形”を呈する。殻表には蛇腹状の規則的な細かい彫刻があり、これが腹面には殻口の歯から外唇および内唇に向かって伸びる多数の襞(ひだ)と完全に連続する。タカラガイにしては殻に光沢がほとんどない。殻口は狭く直線的。殻色は一様に淡褐色。個体数は少なく、死殻がときどき打ち上げられる程度。
シラタマガイ
白玉貝
シラタマガイ科
Trivirostra oryza
トゥリウィロストゥラ オリュザ
 殻高0.5cm程度の小型種。殻は長卵形でタカラガイ型。背面の中央に浅い溝があり、そこから放射状に細い肋が出る。この肋は腹面には殻口の歯から外唇および内唇に向かって伸びる多数の襞(ひだ)と完全に連続する。殻口は狭く直線的。殻色は一様に半透明の白色。死滅サンゴの岩礁に生息したり、ときにはシャコガイなどの大型貝類に付着していることもある。打ち上げ貝でも採集される。
イワカワウネボラ
オキニシ
シマアラレボラ
サツマボラ
写真準備中
イワカワウネボラ
岩川畝法螺
オキニシ科
Bursa granularis
ブルサ グラヌラリス
 殻高3cm程度。殻は背腹に扁平でやや薄質。180度ごとに規則的に縦張肋が出るので殻の左右両側縁に肋が並ぶのが本種を含むオキニシ属(Bursa)の特徴。螺塔は高い。螺層の中央には疣(いぼ)状の結節が並び、その下に2列の顆粒列がある。殻口内は白色で、外唇の内側には細かい刻み目がある。殻色は茶褐色で、縦張肋には白斑が混じる。リーフ内の隠れ根などに生息する。
オキニシ
沖螺
オキニシ科
Bursa bufonia dunkeri
ブルサ ブフォニア ダンカリ
 殻高4〜5cm。殻は背腹に扁平でかなり重厚。殻の左右両側縁の縦張肋は太くよく発達する。螺層の中央には瘤(こぶ)状の大きな結節が並び、殻はかなりごつごつした感がある。殻口から上方に伸びる後水管があるのがオキニシ科の特徴だが、本種の場合はこれが特によく発達する。殻口外唇の内側には粗い刻み目がある。殻色は全体にくすんだ淡緑褐色で、殻口の周辺部は黄色。リーフ内の隠れ根などでかなり普通にみられる。
シマアラレボラ
縞霰法螺
フジツガイ科
Gyrineum gyrineum
ギュリネウム ギュリネウム
 殻高2cm以下の小型種。殻は菱形で背腹にかなり扁平。規則正しく巻き、180度ごとに縦張肋が出る。螺層の中央部に丸い顆粒が規則的に並ぶ。螺塔は高く体層の2倍近い。。殻口はほぼ正円形で、水管溝がわずかに突出する。殻には白地に螺層に沿って3条の暗茶褐色の色帯があり、最上部の色帯はちょうど顆粒列の上を走る。リーフ内の隠れ根などに生息するが個体数は少ない。打ち上げられた殻がオカヤドカリの住処になっていることもある。
ミツカドボラ
三角法螺
フジツガイ科
Cymatium nicoboricum
キュマティウム ニコバリクム
 殻高5〜7cm。殻は重厚。殻表は強い結節などによる凹凸が激しくごつごつしている。240度ごとに強い縦張肋が出るが、上から見ると三角形状に見えるのでこの和名がある。殻口の外唇内側には強い歯が形成される。水管溝は太く、中程度に伸びる。殻は全体に灰褐色で螺肋に沿って暗色の螺条が出る。殻口内は黄褐色。潜水で生貝を見ることは少ないが、摩耗した貝殻が打ち上げられてカヤドカリの住処になっていることがよくある。
サツマボラ
薩摩法螺
フジツガイ科
Cymatium aquatile
キュマティウム アクワティレ
 殻高5〜7cm。ミツカドボラに比べて殻はやや薄質。概形がミツカドボラに似るが、殻表の凹凸はやや弱く、細かい彫刻が目立つ。縦張肋もミツカドボラより弱い。水管溝は太く、中程度に伸びる。殻は全体に灰褐色で螺肋に沿って暗色の螺条が出、紋様はミツカドボラよりはっきりしている。殻口内は淡黄色。潜水で生貝を見ることは少ないが、摩耗した貝殻が打ち上げられてカヤドカリの住処になっていることがよくある。。
シロシノマキガイ
ジュセイラ
ショウジョウラ
シオボラ
ヒメミツカドボラ
シロシノマキガイ
白篠巻貝
フジツガイ科
Cymatium mundum
キュマティウム ムンドゥム
 殻高2〜3cm。殻は紡錘形で螺塔はよく尖る。240度ごとに縦張肋が出るが、縦張肋は比較的幅が狭くて弱い。肩には弱い結節が並び、その下に数本の細い螺肋が走る。水管溝は太く、中程度に伸びる。生時は薄い殻皮を被るが(上の写真)、殻皮を取ると殻の地色は一様に白色で、殻口内も白色。リーフ際やリーフ内の隠れ根などでかなり普通にみられる。
ジュセイラ
寿星螺
フジツガイ科
Cymatium hepaticum
キュマティウム ヘパティクム
 殻高3〜4cm。殻は紡錘形で螺塔は高い。殻表には体層で十数条の明瞭な螺肋があり、螺肋上には顆粒が並ぶ。240度ごとに幅の広い縦張肋が出る。水管溝はわずかに突出する。殻色は、茶褐色と淡褐色の色帯が螺肋に沿って交互に並ぶ。リーフ際やリーフ内の隠れ根などでに生息しする。西表では個体数は多くないが、死殻がときどき打ち上げられる。
ショウジョウラ
猩猩螺
フジツガイ科
Cymatium rubeculum
キュマティウム ルベクルム
 殻高2〜3cm。殻の概形がジュセイラに似るが、やや小型で肩が張る。殻の彫刻はジュセイラよりやや粗い。殻色は全体に赤褐色で縦張肋の部分に白帯が出る。ジュセイラ、ショウジョウラともう一種のバンザイラ(万歳螺)を日本の三名螺といい、これらは西表では俗に鹿川貝(かのかわがい)と呼ばれている。リーフ際やリーフ内の隠れ根などでに生息し、シュノーケリングで生貝が得られることもある。
シオボラ
塩法螺
フジツガイ科
Cymatium muricinum
キュマティウム ムリキヌム
 殻高3〜4cm程度。殻は全体によく膨れる。縦張肋は上方の螺層にはなく、体層近くで2〜3個出るのみ。殻表には強い螺肋があり、縦肋と交差してやや布目状になる。水管溝は細長く、後方に曲がる。殻口部には滑層がよく発達し、特に内唇側に大きく広がる。殻色は全体に灰褐色で殻口の滑層は白色、殻口内は鮮やかな赤褐色である。リーフ内の隠れ根などで普通にみられる。
ククリボラ
括り法螺
フジツガイ科
Cymatium exratum
キュマティウム エクスラトゥム
 殻高3cm程度。殻はやや薄質で全体によく膨れ、240度ごとに縦張肋が出る。肩には結節がなく丸い。殻表には明瞭な螺肋と縦肋があり、上方の螺層では布目状になる。水管溝は太く、中程度に伸びる。殻色は全体に茶褐色で、縦張肋の部分では白帯が出る。殻口内は白色。潜水で生貝を見ることは少ないが、摩耗した殻がよく打ち上げられている。
フジツガイ(前面) フジツガイ(背面)
ホラガイ(腹面) ホラガイ(背面) ふた
ホラガイの蓋
シマイボボラ(腹面) シマイボボラ(背面)
ムラサキハラブトキリオレ
フジツガイ
藤津貝
フジツガイ科
Cymatium lotorium
キュマティウム ロトリウム
 殻高8〜10cm程度。殻は重厚。肩には強い結節が並び、殻はごつごつしている。240度ごとに規則的に太い縦張肋が出る。殻表には明瞭な太い螺肋が走り、その間に細い螺肋がある。殻口外唇内側には強い歯が並び、内唇の滑層にも刻み目がある。水管溝は太く長い。殻色は一様に鮮やかな茶色で、縦張肋の部分では螺肋の間に暗茶褐色の色帯が出る。殻口内唇にも2個の暗茶褐色斑がある。リーフ際やリーフ内の隠れ根などでに生息し、個体数は少ないが、シュノーケリングで生貝が得られることもある。
ホラガイ
法螺貝
フジツガイ科
Charonia tritonis
カロニア トゥリトニス
 殻高40cmを超える大型種。殻は大きさの割には薄質。螺塔は長円錐形で高くそびえる。体層はよく膨れ丸みが強い。螺肋は太く盛り上がる。螺層は規則正しく巻き、240度ごとに縦張肋が出るが、本科の他種のように縦張肋が結節状に肥厚せず反転するのみ。縫合部には刻み目があり、水管溝はわずかに突出する。殻表には螺肋に沿って黒、白、褐色の波型模様が交互に現れる。殻口内唇には多数の黒色の襞(ひだ)がある。蓋(右端の写真)は革質で、楕円形の多旋型。珊瑚礁の貝の代表種で、リーフ際などの岩場の大きな間隙に生息する。オニヒトデを食べる“益貝”として知られている。殻はその美的価値から高価で取引されるが、軟体部は食用としては甚だ不味である。
シマイボボラ
縞疣法螺
イホボラ科
Distorsio anus
ディストルシオ アヌス
 イボボラ類は従来フジツガイ科に含まれていたが、最近の巻貝類分類体の大変更によりイボボラ科として独立した。
 殻高6〜8cm。殻は背腹に扁平。殻の巻き方はいびつで、螺塔はそびえよく尖る。肩が張り、部分的には鋭角になる。殻表には間隔の広い螺肋と縦肋があり、それらが交差して格子状になる。殻口には薄い滑層が著しく発達し、殻の腹面のほぼ全域が滑層で覆われる。殻口外唇内側には強い歯がある。水管溝は短いが、著しく後方に湾曲する。殻色は、淡褐色の地に螺肋に沿って茶褐色の色帯がある。が強い。転石帯などに生息するが個体数は少ない。
ムラサキハラブトキリオレ
紫腹太錐折
ミツクチキリオレ科
Mastonia rubra
マストニア ルブラ
 殻高1cm程度の微小種。殻は厚質で、細い円錐形。左巻き。螺塔は上方に向かって細くなり、下部ではかなり膨れる。殻には体層で5列の顆粒列があり、顆粒は整った半球形で、非常に規則正しく並ぶ。殻口は真円形で、前方に突出する。殻色は一様に赤紫色。転石帯の石の下などに生息し、生貝を見ることは少ないが、殻はよく海岸に打ち上げられ、星砂を探してると、砂中に本種の殻を見つけることがある。
テングガイ
ガンゼキボラ
イチョウガイ
ヒシヨウラク
ウネレイシダマシ
テングガイ
天狗貝
アクキガイ科
Chicoreus ramosus
キコレウス ラモスス
 殻高25cmを超えるアクキガイ科の最大種。殻は重厚でよく膨れる。120度ごとに縦張肋が出、縦張肋間には結節を伴う1本の縦肋がある。縦張肋上には10本程度の強い棘があり、最上の肩部のものは特に強大である。水管溝は太長く、後方に反る。臍孔がある。殻色は一様に灰白色で殻口部の周囲は淡桃色である。珊瑚礁に生息するが、西表ではかなり珍しい。
ガンゼキボラ
岩石法螺
アクキガイ科
Chicoreus brunneus
キコレウス ブルネウス
 殻高6〜8cm。殻は重厚。120度ごとに縦張肋が出、縦張肋間は瘤(こぶ)状に大きく盛り上がる。縦張肋上には10本程度の強い棘があり、最上の肩部のものは特に強大で、棘の先端は後方に反る。水管溝は太長く、先端はやや後方に反る。殻色は全体に黒褐色で、縦張肋の前後は淡色になる。殻口の内唇は淡桃色である。リーフ際やリーフ内の隠れ根などで普通にみられる。
イチョウガイ
銀杏貝
アクキガイ科
Hamalocantha anatomica
ハマロカンタ アナトミカ
 殻高4〜5cm。殻は背腹に扁平。ほぼ90度ごとに縦張肋が出、縦張肋間には螺肋や縦肋はみられない。最後の縦張肋上に4〜5本の突起があり、先端が扇状に広がってイチョウの葉のように見えることが和名の由来。水管溝は太長く、まっすぐ下方に伸びるが先端はわずかに後方に反る。成貝では殻口は輪状に突出する。殻色は一様にくすんだ白色。。リーフ際の平坦な岩礁帯のくぼみなどに生息する。
ヒシヨウラク
菱瓔珞
アクキガイ科
Favartia brevicula
ファワルティア ブレウィクラ
 殻高2cm程度。殻は角張り、前方から見ると菱形で上方から見るとほぼ正方形。殻幅が広い。90度ごとに縦張肋が出、縦張肋間には螺肋や縦肋はみられない。殻表は非常に粗雑で、縦張肋の前後で太い螺肋がみられる。殻口は輪状に突出し、水管溝はほとんど突出しない。殻色は一様に白色。西表では個体数は少なく、殻が打ち上げられる程度。
ウネレイシダマシ
畝茘枝騙し
アクキガイ科
Cronia margariticola
クロニア マルガリティコラ
 殻高2cm程度。殻は紡錘形で体層はよく膨れ、肩が張る。殻には規則的な太い縦肋が畝を形成する。細い螺肋が多く走り、螺肋上には細かい鱗片状突起がある。殻口は広く、外唇内側には弱い歯がある。水管溝はほとんど突出しない。殻色は全体に灰黒色で、螺条の部分が白っぽい。殻口内は暗紫色。リーフ際の岩盤上のくぼみなどに普通にみられる。
キナフレイシダマシ
ヒメヨウラク
レイシダマシモドキ
コマドボラ
ゴマフヌカボラ
キナフレイシダマシ
黄斑茘枝騙し
アクキガイ科
Cronia ochrostoma
クロニア オクロストマ
 殻高1.5cm程度の小型種。殻は前面から見るとほぼ菱形。殻には強い縦肋があり、結節列を形成する。殻口は広く、外唇内側には弱い歯がある。色彩は全体に乳白色で、体層の中央部に細い褐色帯がある。殻口内部は橙色。リーフ際の岩盤上のくぼみや死滅サンゴ帯などに生息するが個体数は少ない。
ヒメヨウラク
姫瓔珞
アクキガイ科
Ergalatax contractus
エルガラタクス コントゥラクトゥス
 殻高2〜3cm。殻は紡錘形で螺塔が高い。肩はあまり張らず、縫合部はややくびれる。規則的な太い縦肋と細かい螺条がある。殻口は広く、外唇内側には弱い歯がある。水管溝がわずかに伸びる。殻は濃淡のあるかすり模で覆われ、縦肋の部分では色が淡くなる。死滅サンゴ帯などに生息する。本土では普通種だが、西表では個体数は少ない。
レイシダマシモドキ
茘枝騙し擬き
アクキガイ科
Muricodrupa fusca
ムリコドゥルパ フスカ
 殻高1.5cm程度。殻は菱形で肩が張る。螺塔はほぼ円錐状。殻表には縦肋に沿って弱い結節があり、殻底部には明瞭な螺条が走る。殻口外唇には弱い歯がある。殻の色彩は、灰白色、白色、黒色などが入り交じる。レイシダマシに似るのが和名の由来。リーフ際の岩盤上や死滅サンゴ帯などに生息するが個体数は少ない。
コマドボラ
小窓法螺
アクキガイ科
Muricodrupa fenestrata
ムリコドゥルパ フェネストゥラタ
 殻高2.5cm程度。殻は紡錘形で螺塔は高い。螺層の中央部が角張り、縫合部はややくびれる。殻表には太い縦肋と螺肋があり、相互に交差して格子状となる。格子の隙間は深くくぼみ小窓のように見えることが和名の由来。殻口外唇には弱い歯がある。殻色は乳白色で、螺肋に沿って茶褐色の帯が出る。リーフ際の岩盤上や死滅サンゴ帯などに生息するが個体数は少ない。
ゴマフヌカボラ
胡麻斑額法螺
アクキガイ科
Maculotriton serriale
マクロトゥリトン セルリアレ
 殻高1cm足らずの小型種。殻は細長い紡錘形で、螺塔は非常に高く体層の2倍近い。各螺層はやや膨れ、縫合部はくびれる。殻表には細い縦肋が規則的にあり、螺肋で遮られて顆粒状になる。殻色は、白色の地色に螺肋に沿って規則的な黒点列がある。西表では個体数は少なく、殻が打ち上げられる程度。
シロレイシダマシ
クチベニレイシダマシ
レイシダマシ
ウネシロレイシダマシ
クチムラサキレイシダマシ
シロレイシダマシ
白茘枝騙し
アクキガイ科
Drupella conus
ドゥルペルラ コヌス
 殻高3cm程度。殻は紡錘形で螺塔が高く、螺塔の先端は尖る。縦肋に沿って強い結節が並び、その間を細い螺肋が走る。殻口の軸心はややねじれる。写真は未成貝だが、成貝では殻口外唇が肥厚して数個の明瞭な歯が生じる。殻は白の単一色で、殻口内も白い。リーフ際の岩盤上のくぼみや死滅サンゴ帯などで普通にみられる。
クチベニレイシダマシ
口紅茘枝騙し
アクキガイ科
Drupella concatenata
ドゥルペルラ コンカテナタ
 殻高2.5cm程度。殻は紡錘形で螺塔が高い。。殻表には縦肋と螺肋が規則的に走り、その交点が結節となる。成貝では殻口外唇はかなり肥厚し、数個の強い歯がある。殻色は淡褐色で結節の部分は暗褐色。殻口の周囲が淡紫色に彩られるのが和名の由来。リーフ際の岩盤上や死滅サンゴ帯などに生息するが個体数は少ない。
レイシダマシ
茘枝騙し
アクキガイ科
Morula granulata
モルラ グラヌラタ
 殻高2〜2.5cm。殻は菱形で重厚、丸みがある。殻表の縦肋と螺肋との交点が強い結節となって盛り上がり、特に肩部の結節は棘状になる。殻口はやや狭く、外唇は肥厚して数個の歯がある。殻色は黒色の地色に太い螺肋の間を細い白帯が走る。リーフ際の岩盤上のくぼみや死滅サンゴ帯などで普通にみられる。
ウネシロレイシダマシ
畝白茘枝騙し
アクキガイ科
Morula anaxeres
モルラ アナクセレス
 殻高1.5cm程度。殻は菱形で肩が張る。螺塔は階段状になる。殻表の螺肋が明瞭で、縦肋との交点が大きな結節となって瘤(こぶ)状に盛り上がる。殻口の外唇は肥厚して数個の歯がある。殻色は灰白色で、螺肋の部分は灰色。殻口内は真黒色で光沢がある。リーフ際の岩盤上や死滅サンゴ帯などに生息するが個体数は少ない。
クチムラサキレイシダマシ
口紫茘枝騙し
アクキガイ科
Habromorula striata
ハプロモルラ ストゥリアタ
 殻高1.5cm程度。殻は菱形に近い紡錘形でやや薄質。螺塔はほぼ円錐形。殻表には細かい明瞭な螺肋が多数走り、その上に弱い縦肋がある。縦肋の表面は波状で弱い結節が生じる。殻色は白色の地色に縦肋の部分に黒色の縦帯が規則的に走り縞模様となる。殻口内は淡紫色。リーフ際の岩盤上や死滅サンゴ帯などに生息するが個体数は少ない。
ハナワレイシ
ムラサキイガレイシ
キマダライガレイシ
アカイガレイシ
キイロイガレイシ
ハナワレイシ
塙茘枝
アクキガイ科
Nassa francolina
ナッサ フランコリナ
 殻高4cm程度。殻は整った紡錘形。縫合部は全く段差がなく滑らかに次層と連続する。殻表には多数の細い螺肋が走る以外は彫刻や突起物がなくかなり滑らか。殻口は半月形で広く、内唇と外唇に歯はないが、内唇の上部に明瞭な1条の襞(ひだ)がある。殻色は茶褐色で、体層の中央部に単色の不定形斑の列(帯)がある。リーフ際の岩盤上のくぼみや死滅サンゴ帯などで普通にみられる。
ムラサキイガレイシ
紫毬茘枝
アクキガイ科
Drupa morum
ドゥルパ モルム
 殻高3〜4cm程度。殻は重厚で球形に近く、腹面は平坦。殻の背面には縦肋に沿って強い結節が並び、結節の先端は尖って棘状になる。殻口外唇には大きな歯があり、このために殻口は狭められる。内唇の下部には外側に向かう3条の襞(ひだ)がある。殻は全体にくすんだ白色で、結節の部分は灰黒色。リーフ際の岩盤上のくぼみや死滅サンゴ帯、さらに潮間帯下部の岩場にも生息する普通種。
キマダライガレイシ
黄斑毬茘枝
アクキガイ科
Drupa ricinus
ドゥルパ リキヌス
 殻高約2.5cm。殻は重厚で球形に近く、腹面は平坦。殻の背面には縦肋に沿って強い結節が並び、殻口近くではこれが長い棘になる。殻口外唇にある大きな歯と内唇の小さな歯のために殻口が著しく狭められる。殻は全体に淡橙色で、結節(棘)の部分は黒褐色。殻口の周囲と殻口内は白色で光沢があり、外唇には鮮やかな橙色の斑点列がある。リーフ際の岩盤上のくぼみや死滅サンゴ帯、さらに潮間帯下部の岩場にも生息する普通種。
アカイガレイシ
赤毬茘枝
アクキガイ科
Drupa rubusidaeus
ドゥルパ ルブシダエウス
 殻高約4cm。殻は重厚で球形に近く、腹面は平坦。殻表は非常に粗雑で、細い螺肋が多数走る。殻の背面には縦肋に沿って強い結節が並び、殻口近くではこれが長い棘になる。殻口外唇には小さな歯列があるが、発達せず前2種の場合のように殻口を狭めない。殻は全体に肌色で、殻口の周囲には赤紫色の滑層が広がり、マニキュアのようである。リーフ際の岩盤上のくぼみや死滅サンゴ帯、さらに潮間帯下部の岩場にも生息する普通種。
キイロイガレイシ
黄色毬茘枝
アクキガイ科
Drupa grossularia
ドゥルパ グロッスラリア
 殻高約2.5cm。殻は重厚で背腹に扁平。殻頂は後方に傾く。殻表は非常に粗雑で、太い螺肋と細い螺肋が交互に走る。殻の背面には間隔の広い縦肋に沿って結節が並び、殻口部では分枝した2本の突起となる。殻口外唇には大きな歯があり、このために殻口は狭められる。個体によってはわずかに臍孔が認められる。殻は全体に肌色で、殻口の周囲と殻口内は鮮やかな橙色。リーフ際の岩盤上のくぼみや死滅サンゴ帯などに生息するが前3種に比べると個体数はやや少ない。
ツノレイシ(前面) ツノレイシ(背面)
ツノテツレイシ(前面) ツノテツレイシ(背面)
テツレイシ(前面) テツレイシ(背面)
ツノレイシ
角茘枝
アクキガイ科
Mancinella tuberosa
マンキネルラ トゥベロサ
 殻高約4cm。殻は菱形で肩が張る。殻表には細い螺肋が多数走る。縦肋に沿って強い結節が並び、結節の先端は尖って棘状になる。特に肩部の棘は強大。殻口は広く、外唇の内側には多数の細い淡褐色の線がある。蓋は革質でやや薄く偏心型。殻色は、白地に上下の結節の間に灰褐色の斑紋がかなり規則的に出る。リーフ際の岩盤上のくぼみや死滅サンゴ帯、さらに潮間帯下部の岩場にも生息する普通種。
ツノテツレイシ
角鉄茘枝
アクキガイ科
Mancinella hippocastanus
マンキネルラ ヒッポカスタヌス
 殻高約4cm。殻は菱形で肩が張る。殻表はやや粗雑でやや太い螺肋が走る。縦肋に沿って強い棘が並び、特に肩部の棘は強大で突起状に長く伸びる。殻口は広い。蓋は革質でやや薄く偏心型。殻色は、白と灰褐色が複雑に入り交じったまだら模様。殻口内は灰色で外唇内側はやや黒い。リーフ際の岩盤上のくぼみや死滅サンゴ帯、さらに潮間帯下部の岩場にも生息する普通種。
テツレイシ
鉄茘枝
アクキガイ科
Thais savignyi
タイス サビニイ
 殻高約4cm。殻は菱形で肩が張る。殻表には細い螺肋が多数走る。縦肋に沿って結節が並ぶ。外唇の内側には3〜4個の小さな歯がある。蓋は革質でやや薄く偏心型。殻色は、黒地に縦肋間に細い白帯が規則的に走る。殻口内は灰色で外唇内側は黒い。リーフ際の岩盤上のくぼみや死滅サンゴ帯、さらに潮間帯下部の岩場にも生息する普通種。
シラクモガイ(前面) シラクモガイ(背面)
コイワニシ(前面) コイワニシ(背面)
テツボラ
ホソスジテツボラ
シラクモガイ
白雲貝
アクキガイ科
Thais armigera
タイス アルミゲラ
 殻高5〜7cm。殻は菱形で重厚。螺塔は高く体層と同程度。殻表には細い螺肋が多数走る。縦肋に沿って3本の強い棘状突起が並び、特に肩部の突起は強大で先端は丸い。殻口は広い。蓋は革質でやや薄く偏心型。殻色は淡褐色で、突起の部分は白い。殻口内は白色で、殻口の周囲は淡褐色。リーフ際の岩盤上のくぼみや死滅サンゴ帯、さらに潮間帯下部の岩場にも生息する。西表では個体数はやや少ない。
コイワニシ
小岩螺
アクキガイ科
Thais squamosa
タイス スクワモサ
 殻高約2.5cm。殻は菱形で厚質、肩が張る。殻表には細くて明瞭な螺肋が多数走る。縦肋に沿って結節が並び、結節の先端は尖る。殻口は広く、外唇の内側に微弱な歯列がある。殻色は全体に褐色で、体層中央部の螺肋に沿って白条が出る。殻口内は淡灰色で、殻口の周囲は褐色に彩られる。リーフ際の岩盤上のくぼみや死滅サンゴ帯などに生息するが、西表では個体数は少ない。
テツボラ
鉄法螺
アクキガイ科
Purpura panama
プルプラ パナマ
 殻高約6cm。殻は厚質で丸みがあり卵形に近い。体層は大きく、よく膨れる。殻表には細くて明瞭な螺肋が多数走る。肩部には弱い結節列が並ぶ。殻口は半月形で非常に広い。殻口外唇の内側には多数の細い溝線がある。殻色は黒褐色で、体層に6条の細い黒色帯がある。黒色帯上には不規則に白斑が出る。殻口内は灰白色で、外唇内側は黒褐色に彩られる。リーフ際の岩盤上のくぼみなどに生息するが、西表では個体数は少ない。
ホソスジテツボラ
細筋鉄法螺
アクキガイ科
Purpura persica
プルプラ ペルシカ
 殻高約6cm。殻は厚質で丸みがあり卵形に近い。体層は大きく、著しく膨れる。殻表には細くて明瞭な螺肋が多数走る。肩部には弱い顆粒列が並ぶ。殻口は半月形で著しく広い。殻口外唇の内側には多数の細い溝線がある。殻色は黒褐色で、体層に6条の細い暗色と白色のまだらの色帯がある。螺肋間は白い。殻口内は灰白色で、外唇内側とと軸心部は淡橙色に彩られる。リーフ際の岩盤上のくぼみなどに生息するが、西表では個体数は少ない。
クチムラサキサンゴヤドリ
ヒラドサンゴヤドリ
キイロカブラガイ
オニコブシガイ(前面) オニコブシガイ(背面)
クチムラサキサンゴヤドリ
口紫珊瑚宿り
アクキガイ科
Coralliophila neritoides
カラルリオピラ ネリトイデス
 これ以後の3種は従来カブラガイ科として独立していたが、最近の巻貝類分類体の大変更によりアクキガイ科内のサンゴヤドリガイ亜科の位置づけとなった。
 殻高1.5cm程度。殻はほぼ球形。殻表は粗雑で細かい螺肋が密に走るが摩耗して平滑になっていることが多い。殻口は半月形で非常に広く、殻口外唇の内側には細かい刻み目がある。殻は全体に白色で、殻口内は鮮やかな紫色。ハマサンゴ類に寄生する。摩耗した貝殻がよく打ち上げられ、貝細工の材料として利用される。
ヒラセトヨツガイ
平瀬豊津貝
アクキガイ科
Coralliophila bulbiformis
コラルリオピラ ブルビフォルミス
 殻高3〜4cm。殻は菱形で厚質、体層はよく膨れる。螺塔は高く、階段状になる。殻には細かい螺肋が密に走り、螺肋上には多数の鱗片状突起が密生し、ときに小棘状になる。殻口は広く、殻口外唇の内側には細かい刻み目がある。個体によってはわずかに臍孔が認められる。殻は全体に淡褐色で、殻口内は淡紫色で光沢がある。イシサンゴ類に寄生し、サンゴのポリプを食べる。サンゴの間を丁寧に捜せば生貝が見つかることがある。
キイロカブラガイ
黄色蕪貝
アクキガイ科
Rapa incurva
ラパ インクルワ
 殻高6〜7cm。殻は球形で薄質、体層は特によく膨れる。螺塔は低く、縫合部はややくぼむ。水管溝が伸び、水管溝は広い。水管の下端ではやや前方に曲がる。殻表には間隔の広い螺条が走るが、体層の中央部ではほとんど消失して殻表は平滑になる。殻口は広く開き、内唇下部には薄い滑層が発達する。殻は全体に黄色味を帯びた白色。ソフトコーラルに寄生し、サンゴ体中に埋在する。西表では個体数は少ない。
オニコブシガイ
鬼拳貝
オニコブシガイ科
Vasum ceramicum
ワスム ケラミクム
 殻高8〜12cm。殻は紡錘形で重厚、螺塔が高い。殻表はやや粗雑で凹凸が多い。縦肋に沿って強い結節が並び、その間を細い螺肋が走る。肩部の結節は特に強く、棘状になる。殻の下部にも螺肋に沿って強い結節(棘)列がある。殻口は細長く、殻口内唇にはフデガイ類のような3条の襞(ひだ)がある。水管溝がわずかに伸び、先端は後方に反る。蓋は小さいが革質で厚く、葉状型。殻は黒褐色と白色のまだら模様で、螺肋に沿って白色帯が出る。殻口内は乳白色。リーフ際の岩盤上のくぼみや死滅サンゴ帯などで普通にみられる。
コオニコブシガイ(前面) コオニコブシガイ(背面)
コオニコブシガイ
小鬼拳貝
オニコブシガイ科
Vasum turbinellum
ワスム トゥルビネルルム
 殻高5〜8cm。殻は逆円錐形で重厚。螺塔は、写真のように低い個体と中程度に高まる個体がある。殻表はやや粗雑で凹凸が多い。縦肋に沿って強い結節が並び、肩部の結節は特に強く、棘状になる。殻の下部にも螺肋に沿って強い結節(棘)列がある。オニコブシガイのような細い螺肋はない。殻口は細長く、殻口内唇にはフデガイ類のような3条の襞(ひだ)がある。蓋は小さいが革質で厚く、葉状型。殻は黒褐色と白色のまだら模様で、螺肋に沿って白色帯が出る。殻口内は乳白色で、外唇の内側は黒く縁取られる。リーフ際の岩盤上のくぼみや死滅サンゴ帯などに生息する普通種。
フトコロガイ
懐貝
フトコロガイ科
Euprica sclipta
エウプリカ スクリプタ
 殻高1〜1.5cm。殻は菱形で螺塔は高い。肩は角ばる。殻表は滑らかで光沢があり、殻全体に細い螺条が走る。体層は大きく、中央部でくびれる。殻口は縦長で狭く、外唇と内唇の内側に細かい歯がある。殻色は灰白色の地に茶褐色の不定形斑が散らばる。殻口内は白色。リーフ際の岩盤上のくぼみや転石の下などに生息するが、西表では個体数は少なく、打ち上げ貝としてときたま見られる程度。
タモトガイ
袂貝
フトコロガイ科
Pyrene punctata
ピュレネ プンクタタ
 殻高1.5〜2cm。殻は紡錘形で螺塔は低い。生時は薄い殻皮で覆われるが、殻表は滑らかで光沢があり、縦肋や螺肋などの彫刻はない。体層は特に大きく、丸味が強い。殻口は非常に縦長で狭く、外唇の内側に数個の歯がある。殻色は茶褐色で、肩には白色斑が広い間隔で並ぶ。体層の下半部には細かい白色の不定形斑が散らばる。殻口内は淡紫色。転石の下などに生息するが、西表では個体数は少なく、打ち上げ貝としてときたま見られる程度。
ムシエビガイ
虫蝦貝
フトコロガイ科
Pyrene flava
ピュレネ フラワ
 殻高1.5〜2cm。殻は整った紡錘形で螺塔は高い。生時は毛状の殻皮で覆われるが、殻表は滑らかで光沢があり、縦肋や螺肋などの彫刻はない。体層は丸味が強い。殻口は縦長で狭く、外唇の内側に数個の歯がある。殻色は橙褐色で、肩には暗褐色と白色の斑紋が交互に並ぶ。殻口内は淡紫色。リーフ際の岩盤上のくぼみや転石の下などに生息する。西表では個体数は少なく、打ち上げ貝としてときたま見られる程度。
スジグロホラダマシ
ホラダマシ
ヒモカケセコバイ
イトマキボラ ふた
イトマキボラの蓋
ナガイトマキボラ
スジグロホラダマシ
筋黒法螺騙し
エゾバイ科
Cantharus undosa
カンタルス ウンドサ
 殻高4cm程度。殻は厚質で、整った紡錘形。生時はビロード状の殻皮を被る。成貝では殻口外唇が肥厚し、正面から見ると肩が張ったように見える。殻表には多数の細い螺肋が走り、肋間の溝は深い。殻口は広く、外唇の内側には細かい刻み目がある。殻色は黒褐色で、螺肋間の溝は淡色、殻口内は白い。リーフ際の岩盤上のくぼみや死滅サンゴ帯などに生息する。西表では個体数は多くないが死殻はよく見かける。
ホラダマシ
法螺騙し
エゾバイ科
Cantharus subrubiginosa
カンタルス スブルビギノサ
 殻高2cm程度。殻は細長い紡錘形。成貝では殻口外唇が肥厚する。殻表には多数の明瞭な螺肋が走る。通常、縦肋が畝(うね)状に出るが、個体によってはこれがほとんどないものもある。殻口は広く、外唇の内側には非常に細かい刻み目がある。殻色は全体に淡褐色で、縦肋の部分は濃い褐色、殻口内は白い。リーフ際の岩盤上のくぼみや死滅サンゴ帯などに生息し、死殻がときどき打ち上げられている。
ヒモカケセコバイ
紐掛け世古貝
セコバイ科
Colubraria cumingii
コルブラリア カミンギイ
 殻高5cm程度。殻は錐形で螺塔は高くそびえる。各層はよく膨れる。殻表には螺肋と縦肋が交差して顕著な布目状彫刻を形成する。縦張肋が不規則に出る。殻口は広く、ほぼ円形。殻口外唇の内側には細かい刻み目がある。短い水管溝があり、下端は後方に反る。殻色は乳白色で、褐色の小さな不定型斑が散在する。礁池内の隠れ根や死滅サンゴ帯などに生息するが、西表では個体数は少ない。
イトマキボラ
糸巻法螺
イトマキボラ科
Pleuroploca trapezium
プレウロプロカ トゥラペジウム
 大型の巻貝で、殻高18cmに達する。殻は紡錘形で厚質、螺塔は高い。肩部に強い結節列が並ぶため肩が張る。結節の部分が太い畝(うね)状の縦肋となる。結節や縦肋のため殻には凹凸が多いが殻表は比較的平滑。水管溝は太長く、まっすぐ下方に伸びる。殻口は広く、ほぼ円形。殻口内には茶色の細い襞(ひだ)が多数ある。殻は全体に肌色〜淡褐色で、茶色の細い螺条が多数走る。蓋は革質で厚く、楕円形の葉状型。死滅珊瑚礁域や礁池内の隠れ根などで普通にみられる。
ナガイトマキボラ
長糸巻法螺
イトマキボラ科
Pleuroploca flamentosa
プレウロプロカ フラメントサ
 殻高15cm程度。殻は長紡錘形で厚質、螺塔は高くそびえる。殻には細い螺溝が多く走る。肩部に弱い結節列が並び、結節の部分が畝(うね)状の縦肋となる。水管溝は太長く、まっすぐ下方に伸びる。殻口は広く、ほぼ円形。殻口内には細い襞(ひだ)が多数ある。殻は全体に赤褐色で、螺溝の部分は色が濃い。死滅珊瑚礁域や礁池内の隠れ根などに生息するが、個体数は少ない。
ムラサキツノマタモドキ
キイロツノマタモドキ
マルニシ
ボットツノマタ
ムラサキツノマタモドキ
紫角叉擬き
イトマキボラ科
Peristernia nassatula
ペリステルニア ナッサトゥラ
 殻高3cm程度。殻は紡錘形で厚質、螺塔は高い。殻表は粗雑、太い縦肋が顕著で、縦肋の畝(うね)はときに稜角状になる。縦肋の間を細い明瞭な螺肋が走る。水管溝は太短い。殻口は中庸大で楕円形。殻口外唇内側には細い襞(ひだ)が多数ある。殻は全体に乳白色で、螺肋の間は淡褐色。殻口内は紫色で光沢がある。リーフ際の岩盤上のくぼみや死滅サンゴ帯などで普通にみられる。
キイロツノマタモドキ
黄色角叉擬き
イトマキボラ科
Peristernia ustulata luchuana
ペリステルニア ウストゥラタ ルーチュアナ
 殻高2〜3cm。殻は紡錘形で螺塔は体層より高い。殻表は粗雑、太い縦肋が顕著で、縦肋の畝(うね)は丸い。縦肋の間を細い螺肋が走る。水管溝は太短い。殻口は中庸大でほぼ円形。殻口外唇内側には細かい襞(ひだ)が多数ある。殻は全体に黄みを帯びた白色で、縫合下部と体層の中央部に茶色の帯が走る。水管溝の先端部は黒褐色に彩られる。リーフ際の岩盤上のくぼみや死滅サンゴ帯などに生息するが個体数は少ない。
マルニシ
丸螺
イトマキボラ科
Leucozonia smaragdula
レウコゾニア スマラグドゥラ
 殻高4〜5cm。殻は球形に近く重厚で、非常に丸みが強い。殻表はほとんど平滑で縦肋はなく、細い螺溝が多数走る。水管溝がわずかに伸びる。殻口は中庸大で楕円形。殻口外唇内側には細かい襞(ひだ)が多数ある。殻は全体に茶褐色で、螺条の部分は黒褐色。殻口内は白色で光沢がある。蓋は殻のわりに小さいが、革質で厚く、楕円形の葉状型。リーフ際の岩盤上のくぼみや死滅サンゴ帯などで普通にみられる。
ボットツノマタ
ボット角叉
イトマキボラ科
Latirus nodatus
ラティルス ノダトゥス
 和名の“ボット”はミクロネシアにある環礁の名に因む。殻高7cm程度。殻は長紡錘形で、螺塔は高くそびえる。太い縦肋が顕著で、体層の中央部で特に強く張り出して瘤(こぶ)状になる。体層の下部には細い螺肋が認められる。水管溝は長く、まっすぐ下方に伸びる。個体によってはわずかに臍孔が認められる。殻は全体に淡褐色で、殻口内は淡紫色。死滅サンゴ帯などに生息するが西表では個体数は少ない。
リュウキュウツノマタ
アヤツノマタモドキ
カザリニシキニナ
スジグロニシキニナ
チトセボラ
リュウキュウツノマタ
琉球角叉
イトマキボラ科
Latirus polygonus
ラティルス ポリゴヌス
 殻高7cm程度。殻は長紡錘形で厚質、螺塔は高くそびえる。殻表には凹凸が多いが比較的平滑で光沢がある。太い縦肋が顕著で、その間を間隔の広い細い螺肋が走る。縦肋は体層では肩部と中央下部で強く角張り結節を形成する。水管溝は長く、やや左に曲がる。殻は全体に淡橙色で、縦肋の部分に暗色帯が出る。殻口内は白色。リーフ際の岩盤上のくぼみや死滅サンゴ帯などで普通にみられる。
アヤツノマタモドキ
綾角叉擬き
イトマキボラ科
Latirus pictus
ラティルス ピクトゥス
 殻高4〜5cm。殻は菱形で厚質。螺塔は高く、体層と同程度の高さ。太い縦肋が顕著で、螺肋はほとんど認められない。縦肋は体層では肩部と中央下部で強く角張り強い結節を形成する。水管溝は太短い。殻には、淡橙色〜淡黄色の地に黒褐色の螺条とかすり模様がある。殻口内は白色。リーフ際の岩盤上のくぼみや死滅サンゴ帯などで普通にみられる。
カザリニシキニナ
飾り錦蜷
イトマキボラ科
Latirus lautus
ラティルス ラウトゥス
 殻高1cm余りの小型種。殻は紡錘形でやや薄質。螺塔は高く、体層と同程度の高さ。体層は多少膨れて殻に丸みがある。螺肋と螺溝が明瞭で縦肋は弱い。水管溝は太短く、広い。殻口は中庸大で楕円形。殻は全体に赤褐色で、螺肋上に白斑が出る。リーフ際の岩盤上のくぼみなどに生息するが、個体数は少ない。
スジグロニシキニナ
筋黒錦蜷
イトマキボラ科
Latirulus turritus
ラティルルス トゥルリトゥス
 殻高4cm程度。殻は錐形で厚質。螺塔は高くそびえ、体層の2倍程度の高さ。殻には間隔の広い明瞭な螺肋が走る。縦肋も顕著で、畝(うね)状に盛り上がる。水管溝は太短く、左に曲がる。殻は全体に赤褐色で、螺肋は黒褐色。殻口内は乳白色。リーフ際の岩盤上のくぼみなどに生息するが、西表では個体数は少ない。
チトセボラ
千歳法螺
イトマキボラ科
Fusinus nicobaricus
フシヌス ニコバリクス
 殻高12cm程度。殻は長紡錘形で、螺塔は高くそびえる。体層の膨らみが強い。殻表はやや粗雑。殻には太い螺肋が走り、縦肋はない。水管溝は著しく長く、まっすぐ下方に伸びるが、先端でやや後方に反る。殻口外唇内側には細い襞(ひだ)が多数ある。殻は、淡黄色の地に茶褐色のまだら模様がある。礫底や死滅サンゴ帯などに生息するが、西表では個体数は少ない。
マルフデ
ニシキノキバフデ
ベニウミフデ
コゲフデ
ベッコウフデ
マルフデ
丸筆
フデガイ科
Mitra cardinalis
ミトゥラ カルディナリス
 殻高7cm程度。殻は紡錘形で螺塔は高い。体層は丸みが強い。殻表はほとんど平滑で光沢がある。殻には非常に細い螺条が多数走り、その上をさらに微細な成長線が横切る。殻口は広く、細長く開く。殻口内唇には4条の襞(ひだ)がある。殻色は、白色の地に赤褐色の斑点列が螺溝に沿って並び、縫合下部には同色の不定形斑が出る。リーフ際の岩盤上の砂溜まりや死滅サンゴの礫帯に生息するが、西表ではかなり珍しい。
ニシキノキバフデ
錦の牙筆
フデガイ科
Mitra stictica
ミトゥラ スティクティカ
 殻高5〜6cm。殻は紡錘形で螺塔は高い。体層は中央部でややくびれる。縫合部には段差があり螺塔は階段状になる。縫合下部に上向きの結節(棘)が並ぶ。殻には弱い螺肋があり殻底部でやや顕著になる。殻口は狭く、細長く開く。殻口内唇には4条の襞(ひだ)があり、外唇下部の殻口端には鋸歯状の細かい棘が並ぶ。殻色は、白色の地に紅色の大きな斑点列が並ぶ。リーフ際の岩盤上の砂溜まりや死滅サンゴの礫帯に生息するが、西表では個体数は少ない。
ベニウミフデ
紅海筆
フデガイ科
Mitra imperialis
ミトゥラ イムペリアリス
 殻高4〜5cm。殻は紡錘形で螺塔は高い。体層は丸みがある。縫合部にはやや段差があり螺塔は階段状になる。縫合下部に上向きの結節が並ぶ。殻には明瞭な細い螺溝が多数走り、螺溝の中には細かい孔列がある。殻口は狭く、細長く開く。殻口内唇には5条の襞(ひだ)があり、外唇の殻口端には鋸歯状の細かい棘が並ぶ。殻色は、茶色の地に、体層中央部に白色の不定形斑が並ぶ。リーフ際の岩盤上の砂溜まりや死滅サンゴの礫帯になどに生息するが、個体数は少ない。
コゲフデ
焦げ筆
フデガイ科
Mitra eremitarum
ミトゥラ エレミタルム
 殻高6〜7cm。殻は整った紡錘形で螺塔は高い。体層には丸みがなく殻の側面は直線的。縫合部にはやや段差がある。殻には細い螺溝が多数走り、殻底部でやや顕著になる殻口は中庸大で、細長く開く。殻口内唇には5条の襞(ひだ)があり、外唇下部の殻口端には鋸歯状の細かい棘が並ぶ。殻色は、淡橙色の地に、茶褐色の縦縞が並ぶ。リーフ際の岩盤上の砂溜まりや死滅サンゴの礫帯になどに生息するが、個体数は少ない。
ベッコウフデ
鼈甲筆
フデガイ科
Nebularia ferruginea
ネブラリア フェルルギネア
 殻高3〜4cm。殻は長紡錘形で螺塔は非常に高い。体層には丸みがなく殻の側面は直線的。縫合部にはやや段差がある。殻には明瞭な螺肋が多数走る。殻口は狭く、細長く開く。殻口内唇には4条の襞(ひだ)があり、外唇下部の殻口端には鋸歯状の細かい棘が並ぶ。殻色は、帯黄白色の地に茶褐色の不定形斑が出る。リーフ際の岩盤上の砂溜まりや死滅サンゴの礫帯になどに生息するが、個体数は少ない。
フチヌイフデ
キバフデ
フトコロヤタテ
ナガシマヤタテ
コシマヤタテ
フチヌイフデ
縁縫い筆
フデガイ科
Nebularia coronata
ネブラリア コロナタ
 殻高2cm程度。殻は長紡錘形で螺塔は非常に高い。体層にはあまり丸みがない。縫合部には段差があり螺塔は階段状。殻には明瞭な螺肋が多数走る。殻口は狭く、細長く開く。殻口内唇には4条の襞(ひだ)がある。殻色は茶褐色で、縫合下部に小さな白斑が並び、その下を白帯が走る。縫合下部の白斑列が和名の由来。リーフ際の岩盤上の砂溜まりや死滅サンゴの礫帯になどに生息するが、個体数は少ない。
キバフデ
牙筆
フデガイ科
Nebularia puncticulata
ネブラリア プンクティクラタ
 殻高3〜4cm。殻は長紡錘形で螺塔は高い。体層には丸みがなく殻の側面は直線的。縫合部にはやや段差がある。殻には明瞭な螺肋が多数走る。殻口は狭く、細長く開く。殻口内唇には4条の襞(ひだ)があり、外唇下部の殻口端には鋸歯状の細かい棘が並ぶ。殻色は、帯黄白色の地に茶褐色の不定形斑が出る。リーフ際の岩盤上の砂溜まりや死滅サンゴの礫帯になどに生息するが、個体数は少ない。
フトコロヤタテ
懐矢立
フデガイ科
Strigatella decurtata
ストゥリガテルラ デクルタタ
 殻高2〜3cm。殻は菱形で背腹にやや扁平。縫合部には段差があり階段状になる。成貝では殻口外唇が肥厚し、正面から見ると肩が張ったように見える。殻表はほとんど平滑で、殻底部のみに螺肋が現れる。殻口は狭く、外唇の肥厚によりさらに狭められる。殻口内唇には4条の襞(ひだ)がある。殻色は、光沢のある黒色で、体層上部に1条の細い黄色帯が走る。殻口内は白い。リーフ際の岩盤上のくぼみや砂溜まりに生息する普通種。
ナガシマヤタテ
長縞矢立
フデガイ科
Strigatella paupercula
ストゥリガテルラ パウペルクラ
 殻高3cm程度。殻は整った紡錘形で螺塔は高い。縫合部は段差がなく滑らかに次層と連続する。殻表はほとんど平滑で、殻底部にのみ微かに螺肋が認められる。殻口は中庸大で、細長く開く。殻口内唇には4条の襞(ひだ)がある。殻色は、黒色の地に白色の縦縞がかなり規則的に並ぶ。リーフ際の岩盤上のくぼみや砂溜まりに生息するが、個体数は少ない。
コシマヤタテ
小縞矢立
フデガイ科
Strigatella zebra
ストゥリガテルラ ゼブラ
 殻高2cm程度。殻は樽形で丸みが強く、螺塔は低い。体層には弱い螺肋が走り、殻底部で顕著になる。殻口は狭く、細長く開く。殻口内唇には4条の白い襞(ひだ)があり、外唇下部の殻口端には鋸歯状の細かい棘が並ぶ。殻色は、黒色の地に淡黄色の縦縞が並び、体層上部に1条の細い淡色帯が走る。リーフ際の岩盤上のくぼみや砂溜まりに生息する普通種で、潮間帯の岩場でもみられる。
オオシマヤタテ
ミダレシマヤタテ
ツノイロチョウチンフデ
ナスビバオトメフデ
オオシマヤタテ
大縞矢立
フデガイ科
Strigatella retusa
ストゥリガテルラ レトゥサ
 殻高2cm程度。殻は樽形で丸みが強く、螺塔は低い。体層には弱い螺肋が走り、殻底部で顕著になる。殻口は狭く、細長く開く。殻口内唇には4条の白い襞(ひだ)があり、外唇下部の殻口端には鋸歯状の細かい棘が並ぶ。殻色は、黒色の地に淡黄色の細い縦縞が密に並び、体層上部に1条の細い淡色帯が走る。リーフ際の岩盤上のくぼみや砂溜まりに生息する普通種で、潮間帯の岩場でもみられる。
ミダレシマヤタ
乱れ縞矢立
フデガイ科
Strigatella litterata
ストゥリガテルラ リッテラタ
 殻高1cm程度の小型種。殻は菱形で丸みが強く、螺塔は低い。殻表には微かに螺溝が認められるもののほとんど平滑。殻口は中庸大で、細長く開く。殻口内唇には4条の白い襞(ひだ)がある。殻色は、黒色の地に淡黄色の稲妻状の縦縞が並び、縦縞がしばしば分断されるのが和名の由来。リーフ際の岩盤上のくぼみや砂溜まりに生息する普通種で、潮間帯の岩場でもみられる。
ツノイロチョウチンフデ
角色提灯筆
フデガイ科
Imbricaria punctata
イムブリカリア プンクタタ
 殻高1.5cm程度。殻の概形はイモガイ類に似る。殻は逆円錐形で丸みが強く、肩も丸い。螺塔は非常に低いが、殻頂は鋭く突出する。殻表には細い螺溝が広い間隔で多数走る。殻口はイモガイ類に似て非常に狭く、非常に細長い。殻口内唇には4条の襞(ひだ)がある。殻色は、全体に淡褐色で、肩の部分は白い。リーフ際の岩盤上のくぼみや砂溜まりに生息するが、個体数は少ない。
ナスビバオトメフデ
茄子葉乙女筆
ツクシガイ科
Pusia tuberosa
プシア トゥベロサ
 殻高1.5cm程度。殻は樽形で、螺塔は低い。螺肋が顕著で、体層で11条認められる。このうち上部の3条には螺肋上に強い結節列があり、殻底部の4条には螺肋上に顆粒列が並ぶ。殻口は狭く、細長く開く。殻口内唇には3条の襞(ひだ)がある。殻色は、体層の上部3条の螺肋までは白色、それ以下は黒褐色に明瞭に染め分けられる。殻底部にも白帯が走る。リーフ際の岩盤上のくぼみや砂溜まりに生息するが、個体数は少ない。
アラレオトメフデ
霰乙女筆
ツクシガイ科
Pusia cancellarioides
プシア カンケルラリオイデス
 殻高2cm程度。殻は樽形で重厚。縦肋と螺肋が顕著で、その交点は強い結節を形成する。特に肩部の結節列は顕著で、瘤(こぶ)状の突起となる。体層最上部の螺肋とその直下の螺肋との間隔だけが広い。殻口は狭く、細長く開く。殻口内唇には3条の襞(ひだ)があり、最上部のものは顕著。殻色は全体に乳白色で、体層の中央部に暗色帯が走る。リーフ際の岩盤上のくぼみや砂溜まりに生息するが、個体数は少ない。
ミヨリオトメフデ
クロオトメフデ
ハナワイモ
セイロンイモ
ガクフイモ
ミヨリオトメフデ
三撚乙女筆
ツクシガイ科
Pusia consanguinea
プシア コンサングイネア
 殻高1.5cm程度。殻は菱形で、非常に丸みが強い。殻には明瞭な縦肋が規則的に並び、殻底部にのみ螺肋が走る。殻表にはそれ以外の彫刻はなくかなり平滑で光沢がある。殻口は中庸大で、細長く開く。殻口内唇には4条の襞(ひだ)がある。殻色は、茶褐色の地に体層の中央部に縦肋上に白色の楕円形斑が並ぶのと、その下に淡黄色の小さな点列がある。リーフ際の岩盤上のくぼみや砂溜まりに生息するが、個体数は少ない。
クロオトメフデ
黒乙女筆
ツクシガイ科
Pusia microzonias
プシア ミクロゾニアス
 殻高2cm程度。殻は紡錘形で、丸みが強い。殻には明瞭な縦肋が規則的に並び、殻底部にのみ螺肋が走る。殻口は狭く、細長く開く。殻口内唇には4条の襞(ひだ)がある。殻色は、茶褐色の地に体層の上部に白色帯が走り、その上に白色の不定形斑が並ぶ。体層の下部にも不明瞭な2本の白色帯がある。リーフ際の岩盤上のくぼみや砂溜まりに生息するが、個体数は少ない。
ハナワイモ
塙芋
イモガイ科
Virroconus sponsalis
ウィルロコヌス スポンサリス
 イモガイはミナシガイとも呼ばれ、“〜ミナシ”と和名のつく種も多い。殻口が狭くあたかも身がないように見えるため。歯舌には毒が含まれ、種によっては人間が刺されて死ぬこともある。
 殻高2cm程度の小型のイモガイ。殻は逆円錐形で、上部でやや細くなる。螺塔はほとんど平坦で、肩が張る。殻径が広くずんぐりしている。殻底部に弱い螺肋が広い間隔で走る。殻口は非常に狭く、細長く開く。殻色は、白色の地に赤褐色の波状縦帯が規則的にある。リーフ際の岩盤上のくぼみや割れ目に生息するが、個体数は少ない。
セイロンイモ
セイロン芋
イモガイ科
Virroconus sponsalis
ウィルロコヌス スポンサリス
 ハナワイモの1型とされるが、殻の形態はかなり明瞭に相違する。殻はハナワイモより小型で、殻高1.5cm程度。ハナワイモより明らかに細身で、さらに丸みが強い。螺塔はやや突出する。体層の下半部には明瞭な螺肋が走り、螺肋上には顆粒を伴う。殻口は非常に狭く、細長く開く。殻色は、白色の地に赤褐色の火炎状斑がやや不規則に並ぶ。殻の下端は紫彩される。リーフ際の岩盤上のくぼみや割れ目に生息するが、個体数は少ない。
ガクフイモ
楽譜芋
イモガイ科
Virroconus musicus
ウィルロコヌス ムシクス
 殻高1.5cm程度の小型のイモガイ。殻は逆円錐形で、上部でやや細くなる。殻の側面は直線的。螺塔はほとんど平坦で、肩が張る。体層全体に弱い螺肋が広い間隔で走る。殻口は非常に狭く、直線的で細長く開く。殻色は、灰白色の地に螺肋に沿って小黒点列が点線状に走る。これが楽譜のように見えるのが和名の由来。種小名の musicus はラテン語で“音楽の”という意味。肩部には黒色斑が並び、体層中央部は赤みを帯びる。リーフ際の岩盤上のくぼみや割れ目に生息するが、個体数は少ない。
アラレイモ
ヒメメノウイモ
ヒラマキイモ
サラサミナシモドキ
ヤキイモ ヤキイモ(殻皮付き)
アラレイモ
霰芋
イモガイ科
Chelyconus catus
ケリュコヌス カトゥス
 殻高3cm程度の小型のイモガイ。殻は樽形で、丸みが強い。螺塔はやや高く、肩は丸い。体層全体に明瞭な螺肋が密に走る。殻口はやや広く、細長く開く。殻色は、灰色の地に褐色の不定形斑があり、螺肋上に褐色斑が点線状に並び、白斑も混ざる。リーフ際の岩盤上のくぼみや割れ目、死滅サンゴの礫帯などに生息するが、個体数は少ない。
ヒメメノウイモ
姫瑪瑙芋
イモガイ科
Chelyconus monachus
ケリュコヌス モナクス
 殻高4〜5cmの中型のイモガイ。殻は長い樽形で、丸みが強い。螺塔はやや高く、肩は丸い。殻底部にのみ螺肋があるが、それ以外に彫刻はなく殻表はほとんど平滑。殻口はやや広く、殻底部でやや広がる。殻色は、紫褐色の地に淡紫色の雲状斑と茶褐色の細い螺条が多数走る。リーフ際の岩盤上のくぼみや割れ目、死滅サンゴの礫帯などに生息するが、個体数は少ない。
ヒラマキイモ
平巻芋
イモガイ科
Dauciconus planorbis
ダウキコヌス プラノルビス
 殻高3〜4cmの小型のイモガイ。殻は整った逆円錐形で、殻の側面は直線的。螺塔はほとんど平坦で、肩が張る。体層の下半部には細い螺肋が走り、螺肋上には顆粒を伴う。殻口は非常に狭く、直線的で細長く開く。殻色は全体に、淡茶色で、茶褐色の細い螺条が走る。肩部には茶褐色の斑紋が並ぶ。リーフ際の岩盤上のくぼみや割れ目、死滅サンゴの礫帯などで普通にみられる。
サラサミナシモドキ
更紗身無擬き
イモガイ科
Dauciconus planorbis
ダウキコヌス プラノルビス
 ヒラマキイモの1型とされる。殻のサイズおよび概形はヒラマキイモとほとんど同様。色彩と斑紋がヒラマキイモと異なり、茶褐色の地色に肩部と体層中央部に白色雲状帯がある。ただし、色彩の個体変異が多く、殻の地色がヒラマキイモと同じだったり、白色帯がほとんどない個体もあり、ヒラマキイモから連続した形態変異のようである。リーフ際の岩盤上のくぼみや割れ目、死滅サンゴの礫帯などで普通にみられる。
ヤキイモ
焼芋
イモガイ科
Pinoconus magus
ピノコヌス マグス
 おいしそうな名前の貝である。殻高4〜5cmの中型のイモガイ。生時はビロード状の殻皮を被る(右の写真)。殻は逆円錐形で、殻の側面は直線的。螺塔はほとんど平坦だが殻頂は鋭く突出する。肩が張るがやや丸みがある。殻表はほとんど平滑で、殻底部にのみわずかに螺肋が認められる。殻口は非常に狭く、直線的で細長く開く。殻色は、白色の地に淡茶色の不定形斑があり、体層中央部には褐色の螺肋が走る。リーフ際の岩盤上のくぼみや割れ目などで普通にみられ、殻は礁池内によく転がっている。
サラサミナシ
カバミナシ
イタチイモ
ヤナギシボリイモ
ハイイロミナシ
サラサミナシ
更紗身無
イモガイ科
Rhizoconus capitaneus
リゾコヌス カピタネウス
 殻高4cm程度の中型のイモガイ。殻は逆円錐形で、殻の側面は直線的。螺塔は低く、肩が張る。殻径が広くずんぐりしている。殻底部はやや直線的に伸びる。殻表に螺肋や彫刻はほとんど認められず、ほぼ平滑。殻口はやや広く、直線的で細長く開く。殻色は全体に淡茶褐色で、肩部と体層中央部に白帯があり、白帯には茶褐色の稲妻状斑を伴う。リーフ際の岩盤上のくぼみや割れ目、死滅サンゴの礫帯などに生息するが西表では個体数は少ない。
カバミナシ
樺身無
イモガイ科
Rhizoconus vexillum
リゾコヌス ウェクシルルム
 殻高10cmを超える大型のイモガイ。殻は逆円錐形でやや薄質、殻の側面は直線的。螺塔は低く、肩が張る。殻底部はやや直線的に伸びる。殻にはごく弱い螺肋が密に走り、殻底部でやや顕著になるが、殻表はほとんど平滑。殻口はやや広く、直線的で細長く開く。殻色は全体に茶色で、白と茶褐色の不定形斑がある。リーフ際の岩盤上のくぼみや割れ目、死滅サンゴの礫帯などに生息し、比較的普通にみられる。
イタチイモ
鼬芋
イモガイ科
Rhizoconus mustelinus
リゾコヌス ムステリヌス
 殻高4cm程度の中型のイモガイ。概形がサラサミナシに似るが明からに細身。殻は整った逆円錐形で、殻の側面は直線的。螺塔はほとんど平坦で、肩が張る。殻底部に弱い螺肋が認められる以外は殻表はほぼ平滑。殻口は狭く、直線的で細長く開く。殻色は全体に緑褐色で、肩部と体層中央部に白帯があり、白帯には黒色の斑紋を伴う。種小名の mustelinus はラテン語で“イタチの”という意味。リーフ際の岩盤上のくぼみや割れ目などに生息するが、個体数は少ない。
ヤナギシボリイモ
柳絞り芋
イモガイ科
Rhizoconus miles
リゾコヌス ミレス
 殻高5〜6cmの中型のイモガイ。生時はビロード状の殻皮を被り、殻皮は帯状に毛羽つ。殻は逆円錐形で、殻の側面はやや膨れ丸みがある。螺塔はやや高く、肩が張る。殻底部に明瞭な螺条が広い間隔で走る。それ以外は殻表は全く平滑。殻口は非常に狭く、直線的で細長く開く。殻には茶色の細い波状線が密にあり、体層中央部に茶褐色帯が走る。殻底部も茶褐色。リーフ際の岩盤上のくぼみや割れ目などに普通にみられる。
ハイイロミナシ
灰色身無
イモガイ科
Rhizoconus rattus
リゾコヌス ラットゥス
 殻高3cm程度の小型のイモガイ。殻は逆円錐形で、殻の側面は直線的。螺塔はほとんど平坦で、肩が張る。殻径が広くずんぐりしている。殻底部はやや直線的に伸びる。体層の下半部には弱い螺肋があり、殻底部でやや顕著になる。殻口は狭く、直線的で細長く開く。殻色は、灰褐色の地に肩部に大きな白斑が並び、体層中央部に不明瞭な白帯がある。リーフ際の岩盤上のくぼみや割れ目、死滅サンゴの礫帯などで普通にみられる。
イモガイ科未同定種
ヤセイモ
キヌカツギイモ
フックラキヌカツギイモ
イボカバイモ
未同定種
イモガイ科
Rhizoconus sp.
リゾコヌス エスピー
 とりあえず種の同定がつかないので紹介する。既知種間の雑種でもなさそうである。1984年9月1日に中野沖のリーフ際で採集した1個体。殻高3.1cm。殻は逆円錐形で、殻の側面は直線的。殻底部はやや直線的に伸びる。螺塔はほとんど平坦で、肩が張る。殻底部はやや直線的に伸びる。肩には結節列が並ぶ。体層の下半部に6条の明瞭な螺溝がある。殻口は狭く、直線的で細長く開く。殻色は灰白色と褐色のまだら模様で殻底部は黒ずむ。
ヤセイモ
痩せ芋
イモガイ科
Virgiconus emaciatus
ウィルギコヌス エマキアトゥス
 殻高4cm程度の中型のイモガイ。生時は薄いビロード状の殻皮を被る。殻は整った逆円錐形で、殻の側面は直線的。螺塔はほとんど平坦で、殻頂部は平ら。殻径は狭く殻は細身。殻表には明瞭な螺肋が多数走る。殻口は非常に狭く、直線的で細長く開く。殻色は全体に肌色で、殻底部は殻口内も含めて紫彩される。オトメイモに似るが、小型で明瞭な螺肋があることで区別される。リーフ際の岩盤上のくぼみや割れ目、死滅サンゴの礫帯などで普通にみられる。
キヌカツギイモ
絹担ぎ芋
イモガイ科
Virgiconus flavidus
ウィルギコヌス フラウィドゥス
 殻高4cm程度の中型のイモガイ。生時に厚いビロード状の殻皮を被るのが和名の由来。殻は整った逆円錐形で、殻の側面は直線的。螺塔はほとんど平坦で、肩が張る。体層の下半部には細い螺肋が多く走る。殻口は非常に狭く、直線的で細長く開く。殻色は全体に緑褐色で、肩部と体層中央部に淡色帯があるが、不明瞭な個体もある。殻底部は殻口内も含のて紫彩される。リーフ際の岩盤上のくぼみや割れ目、死滅サンゴの礫帯などでごく普通にみられる。
フクラキヌカツギイモ
ふくら絹担ぎ芋
イモガイ科
Virgiconus fligidus
ウィルギコヌス フリギドゥス
 殻高3cm程度の小型のイモガイ。殻は菱形に近く、殻の側面は丸みがある。螺塔はやや高く、肩はやや丸い。体層全体に明瞭な細い螺肋があり、螺肋上には顆粒列を伴う。殻口は非常に狭く、細長く開く。殻色は全体に緑褐色で、肩部と体層中央部に不明瞭な淡色帯がある。殻底部は殻口内も含めて紫彩される。リーフ際の岩盤上のくぼみや割れ目、死滅サンゴの礫帯などに生息するが、個体数は少ない。
イボカバイモ
疣樺芋
イモガイ科
Virgiconus distans
ウィルギコヌス デイスタンス
 別名チノイモ。殻高10cmに達する大型のイモガイ。殻は逆円錐形で、殻の側面は直線的。螺塔はやや高く、肩が張る。幼貝では肩部に結節が並ぶが、巻き数が増えるにつれて消失する。殻表に螺肋や彫刻はほとんど認められず、成長線が粗いため殻表はやや粗雑。殻口は非常に狭く、直線的で細長く開く。殻色は全体に淡褐色で、殻底部は殻口内も含めて紫彩される。リーフ際の岩盤上などに生息し、特に潮通しのよい場所でよく見かける。
イボシマイモ
ニセイボシマイモ
ナガシマイモ
ベニイタダキイモ
ニシキミナシ
イボシマイモ
疣縞芋
イモガイ科
Virgiconus lividus
ウィルギコヌス リウィドゥス
 殻高4cm程度の中型のイモガイ。殻は逆円錐形で、殻の側面は直線的。螺塔はやや高く、先端は突出する。肩部には強い結節が並ぶ。殻表はほとんど平滑だが、個体によっては殻底部に顆粒列を伴った弱い螺肋が認められる。殻口は非常に狭く、直線的で細長く開く。殻色は全体に緑褐色で、肩部と体層中央部に白帯がある。殻口内の下端部は紫色。キヌカツギイモに似るが、肩に結節があり殻頂が突出することで区別される。リーフ際の岩盤上のくぼみや割れ目、死滅サンゴの礫帯などでごく普通にみられる。
ニセイボシマイモ
偽疣縞芋
イモガイ科
Virgiconus sanguinolentus
ウィルギコヌス サングイノレントゥス
 別名イボシマイモモドキ。イボシマイモに酷似し、殻のサイズおよび概形はイボシマイモとほとんど同様。殻の下半部に明瞭な螺肋があり、螺肋上には顆粒列を伴う。イボシマイモにみられる、肩部と体層中央部の白帯がないか不明瞭。また、肩部の結節間の色彩はイボシマイモが白色なのに対して本種では殻色と同じ緑褐色である。リーフ際の岩盤上のくぼみや割れ目、死滅サンゴの礫帯などで普通にみられるが、イボシマイモに比べて個体数はやや少ない。
ナガシマイモ
長縞芋
イモガイ科
Virgiconus muriculatus
ウィルギコヌス ムリクラトゥス
 殻高2cm程度の小型のイモガイ。殻は逆円錐形で、殻の側面は直線的。螺塔はほとんど平坦だが、殻頂部は突出する。肩部には弱い結節が並ぶ。殻径は狭く殻は細身で、肩は強く角張る。殻表はほとんど平滑だが、殻底部に弱い螺肋が認められる。殻口は非常に狭く、直線的で細長く開く。殻色は全体に淡緑褐色で、肩部と体層中央部に幅の広い白帯がある。殻底部は殻口内も含めて紫彩される。リーフ際の岩盤上のくぼみや割れ目、死滅サンゴの礫帯などに生息するが、個体数は少ない。
ベニイタダキイモ
紅頂芋
イモガイ科
Virgiconus balteatus
ウィルギコヌス バルテアトゥス
 殻高4cm程度の中型のイモガイ。殻は逆円錐形でやや厚質、殻の側面は直線的。螺塔はほとんど平坦で、肩が張る。肩部には鋭い結節が並ぶ。体層には細かい螺肋が密に走る。殻口は非常に狭く、直線的で細長く開く。殻にはさまざまな太さの茶色帯があり、肩部は白い。殻頂部が淡紫色に彩られ、これが和名の由来。リーフ際の岩盤上のくぼみや割れ目、死滅サンゴの礫帯などに生息するが個体数は少ない。
ニシキミナシ
錦身無
イモガイ科
Stioconus striatus
スティオコヌス ストゥリアトゥス
 殻高7〜8cmの中型のイモガイ。殻は樽形で、殻の側面はよく膨れる。螺塔はやや高く、肩が張る。肩と縫合の間はU字型の溝になる。体層全体に細かい螺肋が密に走る。殻口は広く、殻底部で広がる。殻色は、白地に茶褐色の不定形斑があり、茶褐色斑の中には螺肋に沿って黒褐色の螺条がある。殻口内は純白色。リーフ際の岩盤上のくぼみや割れ目、死滅サンゴの礫帯などに生息し、比較的普通にみられる。
アジロイモ
ツボイモ
ハナイモ
タガヤサンミナシ
モモイロフタナシシャジク
アジロイモ
網代芋
イモガイ科
Darioconus pennaceus
ダリオコヌス ペンナケウス
 殻高4cm以下の小型のイモガイ。殻は樽形で、殻の側面はやや膨れる。螺塔はやや高く、肩は丸い。縫合部は段差がなく滑らかに連続する。体層全体に微細な螺肋が密に走る。殻口はやや広く、殻底部でやや広がる。殻色は、茶褐色の地に白色の鱗状斑がある。リーフ際の岩盤上や礁池内の砂礫底などに生息し、死殻がよく打ち上げられている。
ツボイモ
壺芋
イモガイ科
Darioconus aulicus
ダリオコヌス アウリクス
 殻高10cmに達する大型のイモガイ。殻は紡錘形でやや薄質、殻の側面は膨れ丸みが強い。螺塔は高く、肩は丸くなだらか。縫合部は段差がなく滑らかに連続する。体層全体に微細な螺肋が密に走る。殻口はやや広く、殻底部でやや広がる。殻色は、黒褐色の地に白色の鱗状斑がある。リーフ際の岩盤上や生きた珊瑚礁の間などに生息するが、個体数は少ない。
ハナイモ
花芋
イモガイ科
Darioconus retifer
ダリオコヌス レティフェル
 殻高3cm程度の小型のイモガイ。殻は樽形で厚質、殻の側面はやや膨れる。螺塔はやや高く、肩は丸い。縫合部は段差がなく滑らかに連続する。体層全体に明瞭な螺肋が密に走る。殻口は狭く、細長く開く。殻色は、茶色の地に白色の鱗状斑が密にあり、体層に2条の暗色帯がある。リーフ際の岩盤上や生きた珊瑚礁の間などに生息するが、個体数は少ない。
タガヤサンミナシ
鉄刀木身無し
イモガイ科
Darioconus textile
ダリオコヌス テクスティレ
 殻高4〜7cmの中型のイモガイ。殻は紡錘形で、殻の側面はやや膨れる。螺塔はやや高く、肩は丸い。縫合部は段差がなく滑らかに連続する。体層全体に微細な螺肋が密に走る。殻口はやや広く、殻底部でやや広がる。殻色は、茶色の地に黒褐色の輪郭の白色の鱗状斑がある。“タガヤサン”とはマメ科の植物名。リーフ際の岩盤上や礁池内の砂礫底などに生息するが、西表では個体数はやや少ない。
モモイロフタナシシャジク
桃色蓋無し車軸
クダマキガイ科
Lienardia malleti
リエナルディア モーレッテ
 殻高0.5cmの微小種。殻は紡錘形で、体層はよく膨れる。螺塔が高く、体層と同程度の高さ。縫合部は強くくびれる。太い縦肋が顕著で、その上を細い螺肋が走る。殻口は狭く細長く開き、外唇は肥厚する。水管溝がわずかに伸びる。殻色は、桃色の地に体層の中央部に白色帯が走るが、白帯が不明瞭な個体もある。リーフ際の岩盤上のくぼみや転石帯などに生息するが、個体数は少ない。
ナツメガイ
コナツメガイ
オオタカノハガイ
エガイ
ナツメガイ
棗貝
ナツメガイ科
Bulla ventricosa
ブルラ ウェントゥリコサ
 殻高5cmに達する。殻は卵形でやや薄質、螺塔は殻の上縁から下に埋没する。殻は平滑でやや光沢がある。殻には彫刻がなく殻表は全く平滑。殻の大部分が体層で、体層は著しく膨れる。殻口は著しく大きい。殻色は茶褐色で、淡色の細かい斑紋が散らばり、また黒褐色の不定形斑もある。死滅サンゴの転石帯や岩礁帯に生息する。西表では個体数はやや少ないが、海岸に殻が打ち上げられているのをよく見かける。
コナツメガイ
小棗貝
ナツメガイ科
Bulla punctulata
ブルラ プンクトゥラタ
 殻高3cm程度。殻は卵形でやや薄質、螺塔は殻の上縁から下に埋没する。殻は平滑でやや光沢がある。殻には彫刻がなく殻表は全く平滑。殻の大部分が体層で、体層は著しく膨れる。殻口は著しく大きい。殻色は茶褐色で、細かい白色斑と黒褐色斑が散らばる。ナツメガイとの相違は殻の大きさではなくこの斑紋が識別形質。死滅サンゴの転石帯や岩礁帯に生息する。西表では個体数は少ない。
オオタカノハガイ
大鷹の羽貝
フネガイ科
Arca ventricosa
アルカ ウェントゥリコサ
 殻長10cm程度。殻は横長の長方形でよく膨らみ、かなり厚質。殻頂は大きく突出し、内側へ曲がる。靱帯は著しく長くて全く直線的、多数の細かいホ歯が規則的に並ぶ。殻の腹縁には大きな足糸孔が開き、足糸で岩などに固着する。殻表は輪脈と放射肋が交差して細かい布目状彫刻となる。殻色は、乳白色の地に茶褐色の規則的な稲妻模様があり、後端部はほぼ一様に茶褐色。岩や生きた珊瑚礁に穴を空けて付着するが、個体数は少ない。
エガイ
江貝
フネガイ科
Barbatia lima
バルバティア リマ
 殻長4cm程度。殻は楕円形で膨らみはやや弱い。殻頂はやや突出する。靱帯はやや湾曲し、ホ歯は比較的大きい。殻表は輪脈と放射肋が交差して布目状彫刻となる。殻はビロード状の薄い殻皮で覆われ、殻の前後の螺溝状では殻皮が毛状に毛羽立つ。殻色はほぼ一様に褐色で、殻頂部は白っぽい。岩に足糸で付着して生息するが、本来温帯性の種なので西表には個体数は少ない。
ベニエガイ
コシロガイ
ミドリアオリガイ(左殻外面) ミドリアオリガイ(左殻内面)
クロチョウガイ(左殻外面) クロチョウガイ(左殻内面)
ベニエガイ
紅江貝
フネガイ科
Barbatia fusca
バルバティア フスカ
 殻長5cm程度。殻は楕円形でやや厚質、膨らみはやや弱い。殻頂はやや突出する。靱帯はやや湾曲し、ホ歯は比較的大きい。殻表は輪脈と放射肋が交差して布目状彫刻となる。殻はビロード状の薄い殻皮で覆われる。殻色はほぼ一様に茶褐色で、後部背面は特に色が濃い。殻頂部には白色の山形の色彩が出るのが特徴。殻内面は淡褐色〜茶褐色。岩に足糸で付着して生息し、西表では普通にみられる。海岸に打ち上げられていることが多い。
コシロガイ
小白貝
フネガイ科
Acar plicata
アカル プリカタ
 殻長3cm程度。殻は菱形でやや厚質、よく膨らむ。殻頂は突出して内側へ大きく曲がる。殻の前方と後方に弱い稜角がある。靱帯はほぼ直線的で、ホ歯は比較的大きい。殻表は輪脈と放射肋が交差して粗い布目状彫刻となる。特に輪脈が顕著。殻色は一様に乳白色で、内面はやや赤みを帯びる。浅い岩礁帯に足糸で付着して生息するが、西表には個体数は少ない。
ミドリアオリガイ
緑障泥貝
ウグイスガイ科
Pinctada maculata
ピンクタダ マクラタ
 殻長2cm程度。殻はほぼ四角形で薄質、膨らみは弱い。翼耳が著しく大きく、翼耳と殻本体の境界が不明瞭。靱帯は長くて一直線状。殻表はほぼ平滑で、波状の成長脈を伴う。殻内面の真珠層は薄いが、真珠光沢はかなり強い。殻色は緑褐色で成長脈に従って暗緑色の波状模様が出る。岩や他の貝類に足糸で付着して生息し、西表では普通にみられる。
クロチョウガイ
黒蝶貝
ウグイスガイ科
Pinctada margaritifera
ピンクタダ マルガリティフェラ
 殻長15cmに達する。殻はほぼ円形で厚質、膨らみは弱い。前耳は小さくて殻本体との境界は明瞭だが、後耳は著しく大きく、翼耳と殻本体の境界が不明瞭。靱帯は長くて一直線状。腹縁には革質の鰭状突起が顕著。殻表は粗く、成長脈に沿って層状になる。殻内面の真珠層は厚く、真珠光沢は強い。殻色は暗黒褐色で、成長脈に従って淡褐色の部分が出る。岩やに足糸で付着して生息し、西表では礁池内などで普通にみられる。黒真珠の母貝として重要で、西表でも船浮湾などで養殖されている。
ニワトリガキ
ユキミノガイ
リュウキュウナデシコ(左殻) リュウキュウナデシコ(右殻)
ニシキオウギ
ニワトリガキ
鶏牡蠣
ウグイスガイ科
Malleus regula
マルレウス レグラ
 殻高10cm程度。殻は上下に長く、不定形。薄質、扁平で全く膨れない。殻が左右に屈曲するものもある。個体によっては翼耳が認められる。靱帯は一直線状。殻表は粗雑で、不規則な成長脈で木の皮状になる。殻内面の上部にわずかに真珠光沢がある。殻色は一様に暗黒褐色。岩礁帯の岩に足糸で付着し、しばしば群生する。西表では普通にみられる。
ユキミノガイ
雪蓑貝
ミノガイ科
Limaria basilanica
リマリア バシラニカ
 殻高4cm程度。殻は卵形で後方に傾き、薄質で、よく膨れる。小さな翼耳がある。靱帯溝は幅が広い。殻の前縁には広い足糸開口がある。殻表はやや粗雑で、35本内外の細い放射肋がある。放射肋間の溝は広い。殻色は一様に乳白色、内面は白色で光沢がある。岩礁帯の岩に足糸で付着し、多くの触手を広げている。西表では普通にみられる。
リュウキュウナデシコ
琉球撫子
イタヤガイ科
Chlamys squamosa
クラミュス スクァモサ
 殻高4cm程度。殻は長扇形で薄質、膨らみは弱い。前耳に比べて後耳は非常に小さい。靱帯は長くて一直線状。前耳の下部には足糸開口がある。殻表はかなり平滑で光沢がある。殻には20本内外の弱い放射肋があり、肋上にはV字形の顆粒が並ぶ。放射肋間には細い放射溝が走る。殻色は変異が多いが、一般に暗紫褐色で、放射肋の部分は色が淡くなる。右殻は左殻に比べて色彩が淡い。岩礁帯の岩に足糸で付着する。西表では個体数は少ない。
ニシキオウギ
錦扇
イタヤガイ科
Semipallium tigris
セミパルリウム ティグリス
 殻高6cm程度。殻は長扇形でやや前方に傾き、膨らみは弱い。前耳に比べて後耳は非常に小さい。靱帯は長くて一直線状。前耳の下部には足糸開口がある。殻表は粗雑。殻には9本内外の強い放射肋があり、肋の間隔は広い。殻の全面に多数の細い放射溝が走る。殻色は変異が多いが、一般に暗赤褐色で殻の上方には淡色〜白色の不定形斑が散らばる。殻の内面は黄色味みを帯びる。岩礁帯の岩に足糸で付着する。西表では個体数は少ない。
リュウキュウオウギ(左殻) リュウキュウオウギ(右殻)
チサラガイ(左殻) チサラガイ(右殻)
オオシマヒオウギ(左殻) オオシマヒオウギ(右殻)
リュウキュウオウギ
琉球扇
イタヤガイ科
Comptopallium radula
コムプトパルリウム ラドゥラ
 殻高8cm程度。殻は長扇形でやや前方に傾き、膨らみは弱い。前耳と後耳はほぼ等大。靱帯は長くて一直線状。前耳の下部にある足糸口は狭い。殻表は粗雑。殻には11本内外の強い放射肋があり、肋の間隔は広い。殻の全面に多数の細い放射溝が走る。殻色は、左殻は白色の地に赤褐色〜黒色の不定形斑が散らばり、右殻は一様に白色。殻の内面は一様に白色で、やや光沢がある。岩礁帯の岩に足糸で付着する。西表では個体数は少ないが、シュノーケリングで死殻を見つけることは珍しくない。
チサラガイ
血皿貝
イタヤガイ科
Gloripallium pallium
グロリパルリウム パルリウム
 殻高8cm程度。殻は扇形で、やや膨れる。前耳は後耳より大きい。靱帯は長くて一直線状。前耳の下部には足糸開口がある。殻表は粗雑。殻には13本内外の強い放射肋があり、肋の間隔は狭い。放射肋間には2〜3条の細い放射溝が走る。殻全体が細かい鱗片状突起で密に覆われる。殻色は、赤褐色〜赤紫色の地に白色の雲状斑が散らばる。岩礁帯の岩に足糸で付着する。西表では普通にみられる。
オオシマヒオウギ
大島檜扇
イタヤガイ科
Gloripallium speciosum
グロリパルリウム スペキオスム
 殻高4cm程度。殻は扇形で膨らみは弱い。前耳は後耳よりやや大きい。靱帯は長くて一直線状。前耳の下部には足糸開口がある。殻表は粗雑。殻には11本内外の強い放射肋があり、肋の間隔は狭い。放射肋上には大きな鱗片状突起が規則的に整然と並ぶ。肋間の溝にも微細な鱗片が並ぶ。殻色は桃色〜淡桃色で、左殻では放射肋上に赤褐色の斑紋が出る。岩礁帯の岩に足糸で付着する。西表では個体数は少ない。
チリボタン
メンガイ
ミズイリショウジョウガイ(左殻外面) ミズイリショウジョウガイ(左殻内面)
ミヒカリメンガイ
三光面貝
ウミギク科
Spondylus nicobaricus
スポンドュルス ニコバリクス
 殻高5cm程度。殻はいびつな円形で重質、膨みは弱い。小さな翼耳がある。殻表は粗雑で凹凸が多く、多数の放射肋がある。放射肋上には多数の鋭い棘条突起が並ぶ。殻色は変異が多く、赤褐色や、暗赤色、赤褐色、白色の混ざる個体もある。殻の内面は縁辺部を除いて白色。右殻の殻頂部で岩礁帯の岩に固着して生息する。西表では普通にみられ、左殻が打ち上げられているのをよく見かける。
メンガイ
面貝
ウミギク科
Spondylus squamosus
スポンドュルス スクァモスス
 殻高10cm程度。殻は長卵形で重厚、非常によく膨れる。小さな翼耳がある。靱帯部には左殻と右殻の突起が蝶番状にかみ合って両殻は容易には分離しない。殻表は全く粗雑で、不規則な太い放射肋と細い多数の肋がある。太い肋上には強い棘条突起が不規則に存在する。殻色は赤褐色で、放射肋と棘条突起は白い。殻の内面は縁辺部を除いて白色。右殻の殻頂部で岩礁帯の岩に固着して生息し、西表では普通にみられる。
ミズイリショウジョウガイ
水入り猩々貝
ウミギク科
Spondylus varius
スポンドュルス ワリウス
 殻高25cmを越える大型種。殻はいびつな卵形で著しく重厚、やや膨れる。小さな翼耳がある。靱帯部には左殻と右殻の突起が蝶番状にかみ合って両殻は容易には分離しない。殻表は粗雑で、多数の放射肋がある。放射肋上には多数の鋭い棘条突起が並ぶ。殻の成長に伴って殻内に空隙が生じその中に水が溜まるのが和名の由来。殻色は赤褐色〜白色で、殻の内面は縁辺部を除いて白色。右殻の殻頂部で岩礁帯の岩に固着して生息しする。西表では普通にみられ、シュノーケリングやダイビングでもよく生貝をよく見かける。
カキツバタ(右殻外面) カキツバタ(双殻腹面)
カキツバタ(右殻内面)
トサカガキ(右殻外面) トサカガキ(双殻腹面)
トサカガキ(右殻内面)
シャコガキ
ヒム牡蠣
ベッコウガキ科
Hyotissa hyotis
ヒョティッサ ヒュオティス
 殻高12cm程度。殻は類円形で厚質。殻表は著しく粗雑で凹凸が多い。殻には9本内外の太い放射肋が走り、放射肋上には顕著な稜角があり、かつ不規則に強い棘条突起が出る。この放射肋のために腹縁では鋭角的なジグザクの噛み合わせが形成される。左殻の殻頂部で岩などに付着する。殻色は灰黒色で内面は白色、内面の周縁部は黒紫色。死滅サンゴの岩礁帯の大きな岩などに付着して生息し、西表では普通にみられる。
トサカガキ
鶏冠牡蠣
イタボガキ科
Lopha cristagalli
ロパ クリスタゴーリ
 殻長12cm程度。殻は類円形で重厚。殻表は粗雑で、全体にちりめん状彫刻がある。殻には7本の著しく太い放射肋が走り、放射肋上には顕著な強い稜角がある。この放射肋のために腹縁では鋭角的なジグザクの噛み合わせが形成される。殻内面の周縁部には多数の顆粒があって鮫肌状になる。左殻の殻頂部で岩などに付着する。殻色は一様に暗褐色で内面は淡褐色、内面の周縁部は黒紫色。死滅サンゴの岩礁帯の大きな岩などに付着して生息し、西表では普通にみられる。
ヒメジャコ(淡黄色個体 左殻外面) ヒメジャコ(淡黄色個体 左殻内面)
ヒメジャコ(淡赤色個体 左殻外面) ヒメジャコ(淡赤色個体 右殻内面)
ヒレジャコ(左殻外面) ヒレジャコ(左殻内面)
ヒメジャコ
姫ヒム
シャコガイ科
Tridacna crocea
トゥリダクナ クロケア
 殻長12cm程度。殻は卵形で重厚、非常によく膨れる。殻表はかなり平滑だが輪脈による凹凸が多い。殻には6〜10本の弱い放射肋があり、放射肋の末端は腹縁で明瞭な波状となる。放射肋上には小さな波板状突起が密に並ぶ。殻の背面後方には非常に大きな足糸開口があり、足糸で岩に固着する。殻の後縁内部にはやや大きい刻み目がある。殻色は淡黄色や白色のものが多いが、下の写真のように淡赤色の個体もある。サンゴの岩の中に自ら穴を掘って埋在し、採集は容易ではない。シャコガイ類ではもっとも美味とされ、貝柱や外套膜が寿司ネタなどとして珍重される。石垣島や鳩間島では養殖もされている。西表では普通にみられる。
ヒレジャコ
鰭ヒム
シャコガイ科
Tridacna squamosa
トゥリダクナ スクァモサ
 殻長40cmに達する。殻は卵形で重厚、非常によく膨れる。殻表はやや粗雑。殻には5〜6本のの畝状の著しく太い放射肋があり、放射肋の末端は腹縁で明瞭な波状となる。放射肋上には大きな鰭状突起が広い間隔で並ぶ。放射肋間は非常に広く、細い螺溝が多数走る。殻の背面後方には小さな足糸開口があり、足糸で岩に付着する。殻の腹縁内部の放射肋間にはやや大きい刻み目がある。殻色は一様に白色のものが多いが、写真の個体のように鰭状突起が淡黄色を呈するものもある。転石帯や生きたエダサンゴ帯の中に生息するが、ヒメジャコやシラナミのように岩には埋在せず、また足糸の固着力も強くないので採集は比較的容易である。軟体部は食用となり美味である。西表では普通にみられるが、シャコガイ科の他種に比べて個体数は少ない。
シラナミ(右殻外面) シラナミ(右殻内面)
スエヒロフナガタ
フナガタガイ
ツキヨミガイ
シラナミ
白波
シャコガイ科
Tridacna maxima
トゥリダクナ マクシマ
 殻長30cmに達する。殻は紡錘で著しく重厚、やや膨れる。殻表は粗雑で凹凸が多い。殻には6〜7本の畝状の著しく太い放射肋があり、放射肋の末端は腹縁で明瞭な波状となる。放射肋上には大きな波板状突起が密に並ぶ。殻の背面後方には大きな足糸開口があり、足糸で岩に固着する。殻の後縁内部にはやや大きい刻み目がある。殻色は淡黄色のものが多いが、白色の個体もある。淡黄色のものも白色のも殻内面は一様に白色。サンゴの岩の中に自ら穴を掘って埋在し、足糸で強く固着するので採集は容易ではない。軟体部は食用となり美味である。西表では普通で、潮通しのよいリーフエッジなどでよくみられ、このように外套膜を広げている。
スエヒロフナガタ
末広舟形
フナガタガイ科
Trapezium oblongum
トゥラペジウム オブロングム
 殻長5cm程度。殻は長方形で厚質、よく膨れる。殻頂から殻の後端下縁にかけて弱い稜角が認められる。靱帯は長く、殻の形状に従って曲がる。殻表はやや粗雑で、輪脈と弱い放射肋が交差してやや布目状となる。殻色は一様に帯横白色で、殻内面には光沢がある。潮間下部以深の岩の隙間などに足糸で付着して生息する。西表では個体数は少ない。
フナガタガイ
舟形貝
フナガタガイ科
Trapezium bicarinatum
トゥラペジウム ビカリナトゥム
 殻長3cm程度。殻は長方形でよく膨れる。殻頂から殻の後端下縁にかけて強い稜角がある。殻の後端下縁は強く角ばる。靱帯は長く、殻の形状に従って曲がる。殻表はやや粗雑で、波状の輪脈が密にあり、非常に細い放射肋がそれらを横切る。殻色は一様に白色で、殻内面には光沢がある。岩礁帯の岩の隙間などに足糸で付着して生息する。西表では個体数は少ない。
ツキヨミガイ
月夜見貝
フナガタガイ科
Glossocardia obesa
グロッソカルデイァ オベサ
 殻長2cm程度。殻は長方形で薄質、よく膨れる。殻頂から殻の後端下縁にかけて強い稜角がある。殻の後端下縁は強く角ばる。靱帯は長く、殻の形状に従って曲がる。殻表は滑らかで、非常に細い放射肋密にある。殻色は一様に白色で、殻内面には光沢がある。潮間中部以深の岩の隙間などに足糸で付着して生息する。西表では個体数は少ない。