西表島の地理
西表島の位置 |
八重山諸島の島々と交通 |
西表島は北緯24度15分〜25分、東経123度40分〜55分の東シナ海上に位置し、石垣島、竹富島、小浜島、黒島などともに八重山諸島を形成します。台湾まで約200km、北回帰線まではわずか100kmの距離で、沖縄本島よりも台湾の方がはるかに近いです。
緯度的には台湾の台北市よりも南になります。台湾と日本は1時間の時差がありますが(台湾の方が1時間遅い)、台湾のすぐ隣の西表は日本の明石標準時を使用しているので日本本土とは実質的に1時間程度の時差があることになります。この“時差”は観光客にとってそれほど支障になるものではありませんが、特に夏は日没時間が遅く、夏至頃には午後8時くらいまで明るいのに驚かされます。その逆に日の出は遅く、午前6時ではまだ真っ暗です。
島の面積は284ku、島の周囲は130kmで、佐渡島の約3分の1、淡路島の約2分の1、宮古島の約2倍の面積になります。沖縄県では沖縄本島の次に大きな島です。
山がちの地形で平地は少なく、島の面積の90%以上が亜熱帯の原生林(ジャングル)で覆われます。山がちとはいっても極端に険しい山はなく、最高峰の古見岳でも標高470mで、その他に400m級の山がいくつかあります。山々は幾重にも重なり、山の尾根は連なりあって複雑な地形を形成します。原生林の大部分は国有林で、西表国立公園に指定され、営林署の管理によって動植物が保護されています。大きな川の河口や海岸線などにわずかに平地がみられ、住宅地、農耕地、牧場などに利用されています。
複雑な地形に加えて雨が多いために河川がよく発達し、沖縄県最大の浦内川をはじめとして大小たくさんの沢や川があります。水の流れと複雑な地形が相まってたくさんの滝を作り出しています。特に、沖縄県で落差最大のピナイサーラや、浦内川にかかるマリユドゥ、カンビレーの滝などは有名です。河口の川岸にはマングローブ樹林が発達し、特に仲間川流域のマングローブは日本最大規模を誇っています。
仲間川中流の広大なマングローブ樹林 |
また意外に知られていませんが、西表島では良質の石炭が産出し、かつては内離島、浦内川流域などに大規模な炭坑がありました。しかし、需要の減少とともに現在ではすべて廃坑となっていますが、まだまだ埋蔵量はあるはずです。島の一部には琉球石灰岩と呼ばれる隆起珊瑚の地質があり、ところどころに鍾乳洞が発達しています。西表島には沖縄県で唯一の温泉がありますが、それは近くを火山脈が走っているためで、島の50Kmほど北には海底火山があるそうです。そのため、それほど頻繁ではありませんが地震が発生し、かつて未曾有の大津波が発生したこともあるそうです。
島に住民票のある人の人口は約2000人ですが、観光シーズン中は観光客でその2倍くらいの人口になります。
気 候
各地の月平均気温の季節変化 |
各地の月平均海面水温の季節変化 |
各地の月平均降水量の季節変化 |
ケッペンの気候区分では、西表島は温帯湿潤気候区(Cfa)に属します。しかし、温帯気候(C)と熱帯気候(A)の区別の基準は再寒月の平均気温が18℃を下回るかそれ以上かであり、西表の場合再寒月の1月の平均気温は17.6℃ですから、西表は“熱帯気候”であると言ってしまっても全く過言ではないでしょう。西表の年間の平均気温は23.3℃で、22.8℃の香港よりも暖かいということになります。
このように内地と比べて冬は特に暖かいのですが、一方真夏の気温は内地とほとんど変わりません。真夏の1日の最高気温は、内地では35℃を超えることも珍しくありませんが、西表ではせいぜい32〜33℃までで、最高気温ではむしろ内地よりも低めなのです。しかし気温と暑さは別物で、真夏の西表の暑さはそれはハンパではありません。日差しの強さと紫外線量はきっと内地の何倍もあるのでしょう。
ですから、西表で夏に外を出歩いたり海で泳ぐときには十分な紫外線対策が必要で、日焼け止めや日焼けローションなどが必需品となります。西表に行ってこんがりと日焼けしてやろうと考える人も少なくありませんが、いきなり肌を露出して焼くのははっきり言って自殺行為です。そういうことをやって皮膚が水ぶくれになり、発熱と脱水症状を起こして寝込んだ人を何人も知っています。西表できれいに日焼けしようと思えば、内地の日焼けサロンなどであらかじめ肌に下地を作っていくか、日焼け止めで強力にガードしながらじわじわ焼いていくことでしょう。なお、夏に海でシュノーケリングをするときには日焼け防止のためにTシャツなどを着て泳ぐことをおすすめします。
服装は、4月〜11月は1日の最低気温が20℃を超えているのでTシャツに短パンで過ごせます。それ以外の時期もトレーナーと長ズボンくらいで十分で、厚手のセーターやコートを着ることはありません。冬場も、晴れれば日差しはけっこうきつくて暑く感じます。
西表島は黒潮の流れの真ん中に位置するために海水温も高く、20℃を下回ることはありません。年間の平均海水温は25.3℃で、このように温暖な海洋環境が色とりどりの珊瑚を育み、豊富な熱帯性魚介類の楽園となっています。ちなみに、内地の海開きの時の海水温が22〜23℃ですから、西表では一年中泳げるということになりますが、ただ冬場(12〜2月)は季節風が強くて水からあがってからが寒いので、実質的に海水浴には向かないでしょう。ダイビングはもちろん一年中できますが、特に寒がりの方は冬場にはドライスーツを使用した方が無難かも知れません。でも、西表と伊豆の海水温を比較してみると西表がいかに暖かいかわかります。ただ、島のダイビングサービスの多くは正月過ぎから2月いっぱいまでは客が少ないために営業を休んでいます。
西表島は年間を通じて降水量が多く、年間の総雨量は東京の1.6倍にもなります。そのために水は非常に豊富で、絶対に水不足にはなりません。山がちな地形なので雨雲が発生しやすく、いつも島の上空のどこかにスコール雲がかかって雨が降っています。ぴーかんに晴れていたと思っても一転にわかにかき曇り、滝のようなスコールがやってくることも日常茶飯事で、まさに熱帯性の気候と言えるでしょう。
梅雨の時期は毎年5月中旬〜6月中旬で、内地よりも約1ヶ月早く、梅雨前線が次第に北上して内地が梅雨入りするのと入れ替わりに梅雨が明けます。西表の梅雨時期は湿度が85〜100%で、まるで蒸し風呂の中にいるようですが、沖縄本島地方に比べると降水量は比較的多くないようです。
梅雨が明けると本格的な夏が到来します。梅雨明け直後の西表は快晴で風もない安定した日が続き、最も西表らしさを感じることができる季節です。
7月中旬を過ぎると沖縄名物の台風シーズンに入ります。西表には年間だいたい3〜5個くらいの台風が襲来、あるいは影響します。フィリピンの北から八重山近海にかけてはこの時期によく台風が発生します。このあたりの台風の特徴は、概して動きが遅いのと、移動しながらどんどん発達することで、例えば西表島が4〜5日間くらい強風圏の中にあることも珍しくありません。台風の勢力もそれは凄まじく、家が全壊したり、コンクリートの電柱が根元から折れたりすることすらあります。内地の方では台風の時によく死傷者が出ますが、沖縄ではそのようなことはまずありません。それは、台風の時には絶対に外を出歩かないからで、それくらい台風の怖さをわかっているということです。
夏の観光シーズンに西表へ出かけて、運悪く台風に遭ってしまってずっと宿に缶詰だったなんてこともありますが、そのときは“こんどまた来よう”と思って潔く諦めることです。沖縄ではたとえ台風で住む家がなくなってしまっても、“仕方がない”と思うしかないのですから。カンピラ荘では、台風のときはみんなでトランプなどのゲームをやったり、夜はひたすら飲んでいます。でも、いっしょに缶詰になった人たちと仲良くなれたりして、それもまた楽しいものです。
島の動植物
西表島には原始の自然が残されているので、独特な動植物がいろいろ生息しています。中でも何と言っても特別天然記念物のイリオモテヤマネコが有名で、西表島は“ヤマネコの棲む島”としての知名度が高いです。西表島に行けばイリオモテヤマネコが野良猫のごとく歩いていると思っている人が少なくないようですが、それは大きな間違いで、おいそれとお目にかかれるものではありません。西表にもう20回も通っているこの私でさえもまだ見たことはありませんが、“接近遭遇”はしたことがあって、夜、トラックの荷台に乗って走っていて、運転手が急に車を止めるので何かと思ったら道路の脇の沢にヤマネコがいたそうです。荷台から降りて見たときには既に姿を消していました。イリオモテヤマネコの現在の推定生息数は100頭程度と考えられていて、保護に力が入れられています。
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西表島は、そのほかにも同じく天然記念物のカンムリワシ、セマルハコガメ、キシノウエトカゲをはじめ、さまざまな動植物の楽園です。主な動植物について以下に概説しますので参考にして下さい。
イリオモテヤマネコ(剥製)(西表山猫) Felis iriomotensis |
カンムリワシ(剥製)(冠鷲) Spilornis cheera |
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キシノウエトカゲ(岸上蜥蜴) Eumeces kishinouyei |
セマルハコガメ(背丸箱亀) Cuora flavomarginata |
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リュウキュウイノシシ(琉球猪) Sus scrofa riukiuanus |
サキシマハブ(先島波布) Trimeresurus elegans |
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キノボリトカゲ(木登蜥蜴) Japarula polygonata ishigakiensis |
ホオグロヤモリ(頬黒守宮) Hemidactylus frenatus |
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ヤシガニ(椰子蟹) Birgus latro |
オカガニ(岡蟹) Cardisoma hirtipes |
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ミナミコメツキガニ(南米搗蟹) Mictyris brevidactylus |
サガリバナ(下がり花) Barringtonia racemosa |
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ナリヤラン(成屋蘭) Arundina graminifolia |
アダン(阿檀) Pandanus tectorius |
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サキシマスオウ(先島蘇芳) Heritiera littoralis |
オオタニワタリ(大谷渡) Asplenium nidus |
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島の歴史と地名
西表島にいつ頃から人が住み着いたのかは定かではありませんが、15世紀の朝鮮の古文書に初めて西表のことが登場します。それ以前にも人が住んでいた形跡が風葬跡などからうかがわれます。しかし、西表は大きな島ではあるものの、居住に適した場所が少ないのと風土病のマラリアが長らく人が住むことを拒んでいたようです。
マラリアは今でこそ特効薬がありますが、昔はそれは恐ろしい病気で、マラリアのために廃村を繰り返した村も少なくありません。しかし、西表島は水が豊富なために稲作に最適な土地なので、隣の新城島や鳩間島の人たちがわざわざ西表まで稲を作りにやってきていたそうです。マラリアの恐怖のために定住できなかったのでそのようにしていたのです。第二次大戦後、マラリアは西表から撲滅されたとされ、西表はようやく人の安住できる地となっています。
“いりおもて”というのは沖縄独特の読み方です。西表の名前の由来についてはこちらをご覧下さい。西表島の地名の読み方は、本土復帰後はほとんど内地読みにされていますが、実際の読み方はかなり違います。例えば、古見(こみ)、祖納(そない)、外離(そとばなれ)は、本来の読み方では、古見(くん)、祖納(すね)、外離(ふかぱなり)となります。ただ、現在でも本来の読み方が使われる後良川(しいらがわ)、越良川(くいらがわ)、由珍(ゆつん)、仲ノ御神島(なかのうがんじま)などの例もあります。
西表島に現存する部落は、周回道路に沿って南から、豊原、大原、大富、古見、美原、船浦、上原、中野、住吉、浦内、星立(干立)、祖納(租納)、白浜となりそこで道路は途切れますが、その先に船浮、網取があります。このうち豊原から美原までを東部、それより西(北)の部落を総じて西部と呼びます。かつては東部と西部を結ぶ道がなく、同じ島でありながら船で行き来していたそうですが、1977年にようやく北岸道路が開通して東部と西部が結ばれました。
西表島の現存部落
西表の部落の中で最も古いのが祖納で、少なくとも14世紀頃から現在まで存続しているものと思われます。東部の古見も西表で最も古い時代にできたと言われますが、件のマラリアのために廃村を繰り返し、現在の集落は戦後に新たに入植した人たちによるものです。また、大富や住吉などのように組織的な移民(入植)によって創設された部落もあります。このように、現在の西表の部落はごく一部を除いて比較的新しいものばかりと言えます。
カンピラ荘のある上原部落は西表で最も人口の多い部落で、20世紀の初めに一旦廃村となりましたが、その後鳩間島や沖縄各地からの入植があり、現在では西表一のにぎわいを見せています。
なお、西表の部落名と行政上の地名が必ずしも正確に対応しない場合があるので注意が必要です(例えば上原の場合など)。
島の文化とことば
考古学から有史以前の琉球列島の文化を考察してみると、沖縄本島およびその周辺の島々と西表を含む先島諸島は全く別の文化をなし、先島諸島は南方のフィリピンやポリネシアと共通の文化圏だったそうです。しかしやがて沖縄本島から発祥した琉球王朝の隆盛によって先島諸島も沖縄の文化圏に統合されました。
前述のように西表ではマラリアのために古くから存続している部落はほとんどなく、そのため古来からの伝統文化というものはあまり残っていません。しかし、例外的に歴史の古い祖納や星立部落では、節祭(しち)や豊年祭などの重要な伝統行事が毎年部落をあげてとり行なわれます。このような伝統行事はかつては各部落ごとにあったものと思われ、比較的近年に廃村となった崎山や網取にかつて住んでいた古老からもそのようなことが伝承されています。
琉球列島で話される言語は日本本土の言語とは著しく相違します。沖縄の言語を“沖縄方言”ということがありますが(特に地元の沖縄でも)、しかし沖縄の言語と日本本土の言語は単語の相違はもとより動詞や形容詞の活用法が全く相違するほどに違っていて、これはもはや方言のレベルをはるかに超えています。両者は、例えれば、スペイン語とポルトガル語やマレー語とインドネシア語の関係以上に違うものと思われます。かつては沖縄に琉球王朝という日本とは“別の国”が存在したほどですからそれも当然でしょう。そこでここでは、日本本土の言葉を“大和語”、沖縄の言葉を“沖縄語”と表現することにします。
沖縄語の中でも、沖縄本島およびその周辺の島々で話される言語と、宮古、八重山(先島諸島)で話される言語はまた相当に違うそうです。ただし、内地人(ナイチャー)が聞いたらどちらのことばもまるで理解できないので区別はつかないでしょうが。以前に工事人夫としてカンピラ荘に長期滞在していた沖縄本島の人と話したことがあるのですが、その人は“八重山のことばはぜんぜんわからない”と言っていました。ところが、奄美とか沖永良部のことばはだいたい理解できるそうです。琉球王朝の最盛期には奄美まで勢力圏にありましたから、奄美、沖永良部、与論などは完全に沖縄の文化圏で、ことばも似ているのでしょう。それに対して八重山のことばは、かつて沖縄本島と文化圏が異なっていたこともあって、琉球王朝に統合されたあとも独自性を保っているものと思われます。そこで、沖縄語の中でも八重山のことばを“八重山語”と呼ぶことにします。
八重山語も島によって少しずつ違うようで、例えば大和語の“ありがとう”というのは石垣では“みぃふぁいゆう”ですが(カンピラ荘のカヌーサービスの名前にもなっている)、西表では“にぃふぁいゆう”となるらしいです。また、大和語で“いらっしゃい”というのは、石垣では“おーりとーり”ですが、竹富では“わーりーたぼり”だそうです。西表では何というのか知りません。ちなみに、宮古では“んみゃーち”、沖縄本島(沖縄語)ではご存知の“めんそーれ”となります。しかし、純粋な島の言葉をしゃべれる人は確実にどんどん減っていて、若い世代になるとこのような伝統的なことばはほとんどわからないのが実状でしょう。
八重山では、沖縄本島からの観光客に対して“沖縄の方ですね”と言うそうです。それは、八重山の人たちは自分たちを沖縄人(ウチナーンチュ)ではなく八重山人(ヤーマーンチュ)と思っているかららしいです。このあたりにも八重山の独自性がよくうかがわれます。
観光者が西表で島の人と会話をするときに最も通りがいいのは大和語の関東方言(いわゆる標準語)ですが、関西方言もよくわかってくれます。それ以外の地方のことばはたぶんよく理解されないと思われるので、あまりあからさまに使わない方が無難でしょう。私も自分の地元の方言は西表では使ったことはありません。
このように、島の人は年輩の方でも大和語をよく理解し、またイントネーションに訛りはあるものの大和語を正確に喋ってくれます。ただ、ごく希ですが大和語のほとんどできない人がいて、会話に難儀することがあります。でもそれもまた“秘境西表”のひとつの証明なのかも知れません。
沖縄語(八重山語も含めて)の独特な言い回しの例を挙げると、例えば人数を言うときに、大和語では普通“〜人(にん)”ですが、沖縄では必ず“〜名(めい)”となります。また、相手の言ったことがよく聞き取れずに聞き返すときに、内地では普通“え−?”ですが、これが沖縄語ではなぜか“はー?”になります。沖縄の人はよく“〜しましょうね”と言う表現を使いますが、これは勧誘ではなく自らの意志を示す言い方です。例えば“〜しましょうね”なら英語にすれば“Let's do something”ではなくて、“I will do something”の意味になりますので少し注意しなければなりません。
島の行政と治安
西表島は沖縄県八重山郡竹富町に属し、もちろん町内では最大の島です。竹富町といえば当然竹富島が連想され、西表島がどうして竹富町なのか疑問に思う方もあるでしょう。実は行政区分の竹富町は非常に範囲が広く、八重山の島々は石垣島と与那国島を除いてすべてこの竹富町に属するのです。つまり、文化とか人口的にまとまりのある石垣と与那国以外の島を十把一絡げにしてひとつの町にしたわけで、その名称として琉球王朝時代に八重山統治の役所が置かれていた竹富島の名前を持ってきたというわけです。ということで、竹富町役場が竹富島にあるのかと思ったらそうではなく、町役場は何と石垣島にあるのです。それは、竹富町のどの島からもいちばん交通の便がよいという理由からですが(離島航路はすべて石垣が起点となっている)、非常におもしろい行政形態ですね。なお、竹富町役場の将来の移転先として西表の大原が有力視されているそうです。
西表島には大原、船浦、白浜に八重山警察署の駐在所があり、それぞれ1名の警察官が駐在しています。ときどきパトカーで島を巡回しているのを見かけますが、サイレンを鳴らして現場に急行しているのはほとんど見たことがなく、私が知っているのでは上原にベトナム難民船が漂着したときと、バラス島でダイビング中に事故があったときだけです。それくらい治安がよく、というか、人が少ないので事件や事故の原因がないのでしょう。
2000年10月には波照間島で殺人事件があり、全国のマスコミで大々的に報道されましたが、たぶんあれは八重山始まって以来の出来事だと思います。内地ではああいう類の事件はどこで起こっても全然不思議ではないのですが、そんなことが起こるはずがない場所だったのであんなに大騒ぎになったのでしょう。都会の石垣は別として、その他の島では窃盗事件すらあまり聞いたことがありません。島社会が狭いので、そういう犯罪行為をやるとそこで生活していけなくなるのでしょう。西表も同じです。
私は西表ではずっとカンピラ荘を利用していますが、現金などの貴重品もずっと部屋に置きっぱなしで、部屋の鍵などかけたことがありません。もちろんそういうことをおすすめするわけではありませんが、それくらい安心だということです。世界的に見れば、こんなところはまるで夢のようでしょう。ただ、この前の波照間の事件に象徴されるように、例えば石垣島でオウム真理教の指名手配犯が捕まったりと、最近では悪い方に様変わりしつつあるのも事実かも知れません。
島の交通
西表島には空港がなく、島へのアクセスは石垣島からの海路によります。海の玄関口としては東部では大原港、西部では船浦港で、毎日かなりの便数の高速艇やフェリーが往復して人や物資を運んでいます。
島内では、南東部の豊原から北西部の白浜を結ぶ海岸沿の周回道路が唯一の幹線道路で、他の島のように島を縦横に走る道路はひとつもありません。その他に各部落ごとにいくつかの生活道路や農道があります。周回道路はかなり整備されています。かつて、島を貫く横断道の計画があり、一部着工もしていたのですが、自然保護のために断念されました。その計画の名残が大富林道と白浜林道です。大原に島で唯一の信号機のある交差点があったのですが、数年前に中野にも信号機ができ、西表の信号機は何とふたつになってしまいました。道交法による駐車禁止場所は一ヶ所もなく、車も多くないので交通渋滞もありません。
観光のための交通手段は路線バス、タクシー、レンタカー、レンタバイクなどになりますが、路線バスは便数が非常に少ないのであまり実用的ではありません。何人かで観光する場合はレンタカーが便利ですが、ガソリンスタンドが大原、上原、星立の3ヶ所しかないのでガス欠には注意しましょう。蛇足になりますが、西表のガソリンは高いです。2002年9月ではリッター140円もしました。GS同士の競争がないので仕方ないのかもしませんが。
生活必需アイテム
島に銀行はなく、銀行のキャッシュカードや各種クレジットカードは使えません。しかし祖納と大原に郵便局があり、郵便貯金のキャッシュカードが使えるので、お持ちの方はもっていった方が便利です。コンビニエンスストアーはありませんが、主な部落には売店あるいはスーパーマーケットがあり、生活必需品はだいたい揃っています。カンピラ荘のはす向かいには(西表では)大きな
上原のコンビニ、川満スーパー 川満 スーパーがあって、食品、酒類などの調達には不自由しません(弁当や調理パン類もあります)。
病院はありませんが、祖納と大富に八重山病院の診療所があり、医師と看護婦が常駐しています。歯科以外の診療科目にはだいたい対応してくれるそうです。万が一のときのために健康保険証はもっていった方がいいでしょう。
通信と輸送
携帯電話はNTT DoCoMo、セルラー系、AUが使用できますが、PHSは使えません。インターネット対応のグレー公衆電話はありません。一般の公衆電話も部落ごとに何ヶ所かあるだけでそれ以外の場所にはなく、便利とは言えません。
荷物の輸送は主に郵便によりますが、最近では宅急便もようやく普及してきました。ダイビング機材などの大荷物は事前に宿まで送っておくと便利です。郵パックの場合、20kgまでの重量制限があるので注意しましょう。なお、自動車やバイクなどの石垣島から西表島への輸送は安栄観光の貨客船“ぱいかじ”または八重山観光フェリーの貨客船“かりゆし”、“平成丸”によります。
西表病
西表病は、もっぱら西表を訪れた観光者に感染する風土病です。初めて西表にやって来てその独特の雰囲気や自然のすばらしさに感動したころがこの病気の潜伏期間です。最初のうちは自覚症状がありませんが、発症するとやがて西表へのリピーターとなり、さらに症状が進行してくると高い旅費などものともせずに年に何度も通うようになります。この西表病の治療は難しく、対処療法として西表に頻繁に通うという方法はありますが(ただし、そうするとますます症状が進行する)、根治治療のためには西表に住み着くしかありません。ホームページ管理者はこの西表病の末期症状になりつつあります。
なお、この西表病も含めて“沖縄中毒”という症候群があり、近年特に感染者が増えてきているので沖縄を旅行される方は注意が必要です。