貝は海ばかりではなく汽水域や淡水域、さらには陸上にまで生息しています。西表島には河川が多く、淡水域も豊富なので淡水産の貝類も数種あります。西表島の河川はいずれも河川勾配が非常に緩やかで中流域から下流では流れが極めて弱く、そのために満潮時には相当上流域まで海水が逆流します。つまり、上流近くまで感潮域となっているため感潮域には純淡水貝は生息しませんが、塩分の影響を受けない感潮域より上流の渓流域には淡水の貝が生息します。また、カタツムリ類など水から離れて生活している貝類もあり、そのような陸の貝は森の中や人家の近くの湿った場所に生息します。このページではそのような淡水や陸域に生息する貝類について種ごとに概説します。なお、解説の凡例はこちらです。

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カバクチカノコ
樺口鹿子
アマオブネ科
Neritina pulligera
ネリティナ プルリゲラ
クリグチカノコ
栗口鹿子
アマオブネ科
Neritina squamaepicta
ネリティナ スクァマエピクタ
 殻高4cmに達する。殻は丸みが強くてよく膨れ、螺塔はない。殻口は横に強く張り出し、腹面に向かって大きく広がる。殻表は全く平滑で、茶褐色の滑らかな殻皮を被る。老成した個体ではしばしば殻頂部が浸食される。殻口の外唇、内唇に歯や彫刻はない。内唇の滑層はあまり発達しないが面積は広い。石灰質の蓋を持ち、蓋の表面は平滑で光沢がある。蓋には成長線に沿って縞模様ができる。河川の中流〜上流の渓流域に生息し、岩に付着している。比較的普通にみられる。
ムラクモカノコ
叢雲鹿子
アマオブネ科
Neritina variegata
ネリティナ ワリエガタ
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ヒロクチカノコ
広口鹿子
アマオブネ科
Neritina cornucopia
ネリティナ コルヌコピア
イガカノコ
毬鹿子
アマオブネ科
Clithon corona
クリトン コロナ
 
イシマキガイ
石巻貝
アマオブネ科
Clithon retropicta
クリトン レトゥロピクタ
 殻高2〜2..5cm。殻は丸みが強くてよく膨れ、螺塔は低い。殻口は斜め下方に張り出す。殻表はかなり平滑で、暗緑褐色の殻皮を被る。老成した個体ではしばしば殻頂部が浸食される。殻口の外唇、内唇に歯や彫刻はない。内唇の滑層は発達しない。石灰質の蓋を持ち、蓋の表面は平滑でやや光沢がある。暗緑褐色の地色の中に細かい単色の斑紋が散らばる。河川の中流域に生息し、礫底や岩に付着している。ごく普通種で、どこの河川にも多くの個体が生息する。
ふた
ふた
フネアマガイ
船蜑貝
フネアマガイ科
Sepataria porcellana
セパタリア ポルケルラナ
 殻長2.5〜3cm。殻は楕円形の笠型で、背面中央部はよく盛り上がる。内面の殻口軸部には平坦部が発達し隔板となる。殻表はほぼ平滑で、茶褐色の殻皮を被る。老成した個体ではしばしば殻頂部が浸食される。蓋は軟体部に埋在し、薄い石灰質で、右側に鋭い突起がある。細かい網目模様の個体が多いが、中央の写真のように稲妻模様の個体もある。河川の中流〜上流の渓流域に生息し、岩に強く付着している。感潮域から下流の汽水域には生息しない。ごく普通種で、どこの河川にも多くの個体が生息する。
カミングフネアマガイ
カミング船蜑貝
フネアマガイ科
Sepataria cumingiana
セパタリア カミンギアナ
 殻長2.5〜3.5cm。殻は楕円形の笠型で、背面中央部はフネアマガイよりさらによく盛り上がり丸味が強い。内面の隔板はフネアマガイより大きくよく発達する。殻表はほぼやや粗雑で成長線が明瞭、茶褐色の殻皮を被る。老成した個体ではしばしば殻頂部が浸食される。蓋は軟体部に埋在し、薄い石灰質で、両側に突起があるのがフネアマガイとの決定的な相違。フネアマガイと異なり殻に斑紋はない。河川の中流〜上流の渓流域に生息し、岩に強く付着している。日本で本種の生息が確認されているのは、現在のところ西表島の北部〜東部の河川のみである。
ヨシカワニナ
葦川蜷
トウガタカワニナ科
Thiara plicaria
ティアラ プリカリア
 殻高6cmに達する。殻は薄質で細長く棒状。螺塔は著しく高くそびえ、先端は鋭く尖る。各螺層はよく膨れ、縫合部は強くくびれる。殻表には細い螺肋が規則正しく走る。殻口は楕円形で大きく開く。殻は全体に暗褐色の薄い殻皮を被る。殻には褐色の細い縦縞が多くある。島の南部の河川の中流域に生息するが、個体数は少ない。
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イボアヤカワニナ
疣綾川蜷
トウガタカワニナ科
Tarebia granifera
タレビア グラニフェラ
 殻高2cm程度。殻は紡錘形で薄質、螺塔は高くそびえる。各螺層はほとんど膨れない。縫合部はくびれ、螺塔の側面は階段状になる。殻表には細い螺肋が広い間隔で走り、肋上には細長くて大きな顆粒が並ぶ。殻口は楕円形で大きく開く。殻は全体に暗褐色の薄い殻皮を被る。殻には褐色の小班点が散らばる。島の南部の河川の中流域に生息し、河川によって普通にみられる。
トウガタカワニナ
塔形川蜷
トウガタカワニナ科
Thiara scabra
ティアラ スカプラ
 殻高2.5cm程度。殻は紡錘形で薄質、螺塔は高くそびえる。各螺層はやや膨れる。肩は強く角ばり、螺塔の側面は階段状になる。殻表には非常に細い螺肋が広い間隔で走る。肩には強い結節が広い間隔で並ぶ。殻口は楕円形で大きく開く。殻は全体に暗褐色の薄い殻皮を被る。殻には褐色の不定形斑が散在する。島の南部の河川の中流域に生息し、河川によって普通にみられる。
アオミオカタニシ
青味陸田螺
ヤマタニシ科
Leptopoma taivanum
レプトポマ タイワヌム
 
オキナワヤマタニシ
沖縄山田螺
ヤマタニシ科
Cyclophorus turgidus
キュクロポルス トゥルギドゥス
 殻高2.5cm程度。殻は菱形で、螺塔は高い。各螺層はよく膨れ、殻は丸味が強い。縫合部は強くくびれ、螺塔の側面は階段状になる。殻表には螺肋や縦肋はなく螺肋や縦肋はなくほとんど平滑、茶褐色の滑らかな殻皮を被る。殻口は大きく横に張り出し、真円形で大きく開く。成貝では殻口外唇は反転する。カタツムリ類と異なり、革質の少旋型の蓋を持つ。殻には黒褐色の火炎状斑や螺条がある。山中の堆積した落ち葉の下などに生息し、西表では個体数はやや少ない。
ツヤカサマイマイ
艶笠舞舞
カサマイマイ科
Videna carthcartae
ウィデナ カルトゥカルタエ
 殻径2cm程度。殻は円盤形で、螺塔は非常に低く、上下に著しく扁平。体層の側縁には強い稜角がある。体層の腹面はやや膨れ、螺塔の縫合部はややくびれる。殻は茶褐色の殻皮を被り、殻表はほとんど平滑で光沢がある。殻口は横に張り出し、菱形で細長く開く。成貝でも殻口外唇は反転しない。臍孔(さいこう)は非常に広く開き、殻頂まで達する。山中の堆積した落ち葉の下などに生息するが、西表では個体数はやや少ない。
イッシキマイマイ
一色舞舞
ナンバンマイマイ科
Satsuma caliginosa
サツマ カリギノサ
 殻径4cm程度。殻は偏平な球形で、螺塔はやや高い。体層は非常によく膨れ、殻は丸味が強い。螺塔の縫合部はくびれる。殻は淡褐色の殻皮を被り、殻表はほとんど平滑で光沢がある。殻口は横に張り出し、やや大きく開く。成貝では殻口外唇は反転する。臍孔(さいこう)は開く。体層の中央部の縫合線直下に茶褐色の細い色帯が走る。殻口内は白っぼい。山中の堆積した落ち葉の下などに生息し、西表では普通にみられる。
クロイワビリマキマイマイ
黒岩左巻舞舞
ナンバンマイマイ科
Satsuma yaeyamensis
サツマ ヤエヤメンシス
 殻径2.5cm程度。殻は左巻き。円盤形で、螺塔は非常に低い。体層は非常によく膨れ、殻は丸味が強い。螺塔の縫合部はくびれる。殻は淡褐色の殻皮を被り、殻表はほとんど平滑でやや光沢がある。殻口は横に大きく張り出し、大きく開く。成貝では殻口外唇は反転する。臍孔(さいこう)はやや大きく開き、殻頂まで達する。体層の中央部の縫合線直上に薄い茶褐色の細い色帯が走る。殻口内は白っぼい。山中の堆積した落ち葉の下などに生息し、西表では個体数は少ない。
ミズイロオオベソマイマイ
水色大臍舞舞
オナジマイマイ科
Aegista vermis
アエギスタ ウェルミス
 殻径2cm程度。殻は円盤形で上下に著しく扁平、螺塔はほとんど平坦。体層はやや膨れ、螺塔の縫合部はややくびれる。殻は淡褐色の殻皮を被り、やや光沢がある。殻表はほとんど平滑だが細かい成長肋がやや顕著。殻口は横に張り出すが小さい。成貝では殻口は下に向き、外唇は反転する。臍孔(さいこう)は著しく広く開き、殻頂まで達する。山中の堆積した落ち葉の下などに生息し、西表では分布が偏在するようで、場所によっては普通にみられる。
クロイワオオケマイマイ
黒岩大毛舞舞
オナジマイマイ科
Aegista mackensii
アエギスタ マッケンシイ
 殻径3cm程度。殻は円盤形で上下に扁平、螺塔は非常に低い。。体層の側縁には強い稜角がある。体層の腹面はよく膨れ、螺塔の縫合部はわずかにくびれる。殻は茶褐色のやや厚い殻皮を被り、多くの毛状皮を伴う。殻口は横に張り出し、菱形でやや細長く開く。成貝では殻口は下に向き、外唇は反転する。臍孔(さいこう)は非常に広く開き、殻頂まで達する。山中の堆積した落ち葉の下などに生息するが、西表では分布が偏在するようで、場所によっては普通にみられる。
オキナワウスカワマイマイ
沖縄薄皮舞舞
オナジマイマイ科
Acusta despecta
アクスタ デスペクタ
 殻径2cm程度。殻は薄質で球形に近く、螺塔は高い。体層は非常によく膨れ、殻は丸味が強い。螺塔の縫合部はくびれる。殻は淡褐色の殻皮を被り、殻表には細かい成長肋が顕著にある。殻口は斜め下方に張り出し、円形で大きく開く。成貝でも殻口外唇は反転しない。臍孔(さいこう)は小さく開く。殻口内は白っぼい。西表ではごく普通にみられ、人家の近くの草むらや石垣の間などに多く、雨上がりなどには這いだしてきてよく活動している。